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社会学入門2011 第7講 地位と役割(3) [社会学入門]

社会学入門2011 第7講 地位と役割(3)

 地位に期待される役割をいったん取得したとしても、同じ地位にあったとしてもその役割がずっと続くわけではない。環境や条件が変わることによって期待されるされる役割が変化することがある。また行為者自身が自分の役割を変えていく場合もある。

今回の教材

「Mother」(第8話)
監督:水田伸生、長沼誠
脚本:坂元裕二
製作:次屋尚、千葉行利
出演:松雪泰子、山本耕史、酒井若菜、倉科カナ、芦田愛菜

2010年4月14日~6月23日、日本テレビ、水曜22:00
水曜ドラマ

<道木仁美の変化>

 今回は主人公ではなく怜南の母親道木仁美の2003年から2010年までの変化について分析する。

<分析のポイント>

 分析のポイントは次の2点。

1.「ギュー」っと抱きしめる行為
2.「状況の定義」という分析の視点

<状況の定義とは?>

「人が自分の置かれた状況を認識し、その意味を解釈すること」=状況の定義

→状況を定義するのは行為者自身
→定義する内容は個人によって異なる

 状況の定義は社会化の中で習得され、同じ社会に所属するメンバーあるいは文化を共有するメンバーが同じ状況の定義を行う場合がある。行為者は定義した内容に従って行動する。

 前回、乗客の例をとりあげたので、乗客を例に状況の定義について説明したい。

 電車の乗客は、自分が乗客に乗った状況を「一時的な地位としての乗客になった」と定義する。そしてこれまでに習得してきた役割リストから「乗客」という役割をとりだし、その役割を行う 。電車に乗った乗客の多くは相互にそれぞれの定義を感じ取って、同じ状況の定義を行うため(模倣)、乗客はよく似た行動を行う。

<怜南誕生ー家族の誕生(2003)>

 恋愛をしていた男女が結婚し、「愛の結晶」としての子どもが誕生した。夫婦はこの子どもの誕生を純粋に喜んだ。夫は仕事をして必死に働き、一方妻は家事・育児に従事する。これは第二次世界大戦後、アメリカ文化の影響を受けた日本人が「理想像」と定義した「核家族イメージ」と合致する。
 理想的な核家族イメージを実現した仁美は、おそらく幸福感を味わっていただろう。そして家族のために働き、子どもをかわいがる夫と娘を愛し、家事・育児に従事して夫に尽くす良妻賢母、という「理想的な妻」の役割をはたす。この役割は夫婦がともに期待するイメージである、だけでなく、世間一般が期待する役割でもあった。

<夫の死後(2006)>

夫が死に母子家庭になっている。そのため一人で、働き、夫との愛の結晶である子どもを愛し、育てる。これは必死に働く母親という役割である。

☆母子家庭の母親は必死に働くというイメージ
☆子どものために働く母親を評価するイメージ

これらは仁美自身が自分の状況を定義した内容であり、その定義の中での母親の役割期待である。そしてこの役割期待は社会全体が共有している。

仁美は次のように考えていた。怜南はいろいろな人がほめてくれる。でも母親(自分)をほめる人はいない。こういう意識は子どものためにがんばって働く母親というイメージを揺らがせることになる。

近所に住むおばあちゃんが怜南を預かって仁美を支えている。 この女性は仁美の行動を肯定する存在である。この女性が存在することで、仁美の役割期待は肯定される。

<支援者の転居>

 母娘を支えていた女性が転居してしまう。支援者を失った二人の生活はどんどんすさんでいく。怜南は成長して自意識が芽生え始めている。今までとは異なって母親に対して反応するという子である。今までよりも愛情が注がれていないと感じた怜南は母親の関心をかうように行動する。反抗的な態度、自分の言うことを聞かない怜南に仁美は戸惑いを感じる。
 反抗的な行動にストレスを感じながらも、育児が大切だという意識はある。つまり母親は子どもを愛し、育てるというイメージ(役割意識)はある。
 子どもが寂しい思いをしていることを感じるだけの精神的余裕はまだ残っている。

<他者との接触>

 仕事に行っている間、怜南を保育所に預けることにしたが、保育所の空きがなく、遠くの保育所を利用することになる。これまでは職場と家の往復で、他者との接触がほとんどなかったが、保育所に預けることによって子どもを介した新しい他者との接触がはじまる。

 仕事が延長すると保育時間内に迎えに行けない。そのため保育所から非難の声が上がっている。

 他の母親との接触場面では、きちんとしつけられている子どもに対し、怜南は他の子どものように静かに遊ぶことができない。そして他人からしつけの悪さとその原因が「父親の不在」であると指摘され、強いショックを受ける。

 こうした他者との接触によってさらに自分が取得している母親としての役割が不安定になる。

<体罰の肯定>

 しつけとしての体罰の必要性を指摘される。それまで仁美には育児に体罰が必要というイメージがなかった。それまで仁美は

体罰 = 悪 というイメージがあった。彼女の期待した母親としての役割には体罰がなかった。だから実際に怜南に体罰をしたときに罪悪感が生じていた。

 体罰をつらいと感じるのは相手の立場に立って考えるからである。体罰を受けた方は痛いし、精神的にショックを受けるだろうということを想像するからつらくなる。しかし体罰が常習化すると相手の立場に立って考えなくなる。デコピンした怜南がむくれて反抗的な態度をとるようになると、よけいに怜南の気持ちを考えなくなっていく。

<怜南から離れる>

 仁美は怜南が寝てから友だちと遊びに行くようになる。
 自分のいらだちを子どもにぶつけるようになる。

 この時点において明確に母親としての役割が変化する。すなわち子どもに無償の愛をそそぶ母親というイメージ、子どものことだけを考えて行動する母親という役割ではなくなる。むしろ母親としての役割よりも自分の欲求を重視する『女性』という地位に近づいてく。これは友だちや他の母親との接触によって社会化されたからである。

<不可逆的な変化>

 仁美は夫のことを思い出して海のレストランに行く。怜南は天使のような笑顔で仁美を喜ばせ、仁美は一瞬現実を忘れる。しかし近くにいた客は「うるさい」という視線を送る。それによって仁美は現実に引き戻される。自分たちを守ってくれる夫(父親)が不在であること。つまりかつての理想的な核家族に戻れないことを再確認した。
 元に戻れないことを確認した仁美は家族の解体を決意する。子どもを海において逃げようとする。逃げるところを怜南に見られる。それによってこの段階での家族の解体はあきらめる。

<新しい出逢い>

 仁美は一人でバーに飲みに行く。そしてそこで男と出会う。この男は仁美に対して役割期待をする新しい存在である。
→男は理想的な家族を希望していない。
→自分の生活を支える女性を求めている(役割期待)

最初のうちは、仁美は男の役割期待を取得しようとはしない。

<新しい役割期待>

 男が同居するようになり(大きな環境の変化)、男との接触頻度が増加する。接触頻度が増加すると社会化の機会が増加することになる。仁美は娘との二人の生活では行わなかった状況の定義を行う。

 男との生活の中で仁美は娘は自分にとって「邪魔」な存在だと定義し、虐待を行うようになる。ただ男が子どもを気絶させたことを知って「罪悪感」がもどる。そして心中しようとするが、子どもにぎゅーっとされて心中をやめる。

<地位の変化>
母親から恋する女へ。

仁美は娘を自宅から追い出して男と二人の生活をする。

<役割の変化>

 母親という役割を期待したのは、「夫」でありその期待をうけた自分である。夫の死後はいったん取得した役割が維持されているのだが、同時に世間と自分も「母親』という役割を期待している。
 娘が成長すると娘が仁美に母親としての役割を期待するようになる。
 男と同居し、男が期待する役割を取得することによって自宅という「場」において母親から女に変化する。この役割の変化(地位の変化)によって仁美の意識自害が変化する。


<意識の変化>

虐待事件のニュースを見たときの仁美の反応

役割が変化するとものの考え方や意識までも変化する。

<役割期待は相互行為>

子どもはいつも「社会化される者」とは限定されない。
親が子どもから社会化されることがある。

コミュニケーションの中では「社会化される者」と「社会化の担い手」が相互に入れ替わる。

母親は子どもによって母親になっていく。


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社会学入門2011 第6講 地位と役割(2) [社会学入門]

社会学入門2011 第6講 地位と役割(2)

今回の教材

LISMOドラマ「阪急電車-征志とユキの物語」
監督:宮崎暁夫、監督監修:三宅喜重
脚本:渡辺千穂
制作:KDDI、関西テレビ
原作:有川浩、2008、『阪急電車』幻冬舎

 この作品は映画『阪急電車-片道15分の奇跡』のスピンオフで監督、脚本家が異なる。かなり原作に忠実な作品になっており、台詞はほぼ原作と同じだった。このストーリーをスピンオフとして映画本編からはずしたため、映画本編は女性を軸にしたスッキリしたストーリーになっていた。

 まずはオープニングから。

「電車に一人で乗っている人は、大抵無表情でぼんやりしている。視線は外の景色か吊り広告、あるいは車内だとしても何とはなしに他人と目の合うのを避けて視線をさまよわせているものだ。そうでなければ車内の暇つぶしの定番の読書か音楽か携帯か。」(有川浩『阪急電車』2008:8)

 これは電車内の乗客の様子を描写したものである。ここでの乗客の態度は何を意味しているのか。まずは電車内で迷惑だと言われる行為について考えてみたい。

 日本民営鉄道教会HPに「電車内での迷惑行為ランキング」掲載されていた。これによれば2009年のランキング1位は「電車内で騒ぐ」でありこの行為は2006年頃から急激にランキングをあげている。第2位は「ヘッドホンの音」でこれも2007年から急激にあがってきた。第3位は「座席の座り方」でこれは2008年は1位であったがランキングを下げた。第4位は「携帯電話の使用」であるが、これも「座席の座り方」と同様にランキングが下がってきている。

 さてそもそも「迷惑行為」とは何か。迷惑行為とは=
一般には多くの人が「不適切だ」と感じる行為
 →その多くが本来は関わり合うことがない人同士が関わり合う場面で生じる

 一般に迷惑行為にリストされる項目には犯罪行為(痴漢やすりなど)は含まれていない。
 →迷惑行為は成文化されていない「常識」に反する行為と認識されている。
 →迷惑行為は成文化されない「規範」に違反する行為

 つまり乗客という一時的地位に期待される役割の一つは「他の乗客に迷惑をかけない」という行為である。役割は規範となる。
 「他の乗客に迷惑をかけない」という役割期待を取得した乗客は「普通の乗客」(小説の中で言う「大抵の乗客」)として認知される。
 迷惑行為をする人は普通農場客ではない、危ない人、車内の安定を乱す人と認知される。だから迷惑行為をする人には危険を避けるため、その人には近づかない。近づく場合には危険を承知の上で近づかなければならない。

 乗客のような一時的地位は深い人間関係に発展する可能性が少ない。そうした一時的地位にも役割期待があり、それを我々が取得するのはなぜだろうか?
 これは安全に社会生活を送るためのルール(社会規範)である。
 →接触する人間に対する判断基準になる。

 さてここで社会学の理論を一つ紹介する。「社会化」である。社会化とは

「他人が他者との相互作用の中で、彼が生活する社会、あるいは将来生活しようとする社会に、適切に参加することが可能になるような価値や知識や技術や行動などを習得する過程。」(『社会学辞典』有斐閣 )
 人間は社会化によって適切な行動パターンを習得しなければ社会の中で円滑に生活できない。社会は適切に人間を社会化することができなければ、社会を構成するメンバーがいなくなって、社会を安定させることができない。

 社会化は
「社会の担い手」
「社会化される者」
「伝達される内容」
「社会化の担い手と社会化される者の関係」
「社会化が行われる生活の場」
「社会化の背景」
という6つの要素から構成される。これら6つの要素の絡み合いの中で社会化が行われ、我々は社会のメンバーとなる。

 役割取得は社会化の一つの機能である。
 社会には地位ー役割という形で、地位に対する役割期待がストックされている。この社会がストックしている役割期待を、社会化によって自分のなかに取り込む。我々は取得した役割をそのときおりの地位に合わせて役割を選択して利用する。こうして社会の中で円滑に生活していく 。

 社会化は具体的にはどのように行われるのだろうか。社会化は「社会化の担い手」と「社会化される者」の間で模倣によって行われる。模倣という手段によって「伝達される内容」が伝達されると言うことである。
 子どもが親と同じ癖や行動パターンになるのは、模倣による社会化の結果。後輩が先輩に似るのも同じ。また夫婦がよく似た考え方や行動になるのも社会化の結果である 。

 役割取得は社会化によって行われることが多い。しかし模倣という社会化だけでなく、対人関係の中で役割が取得されることも少なくない。

 それではドラマのOPにもどろう。
 電車にあとから乗車したユキは他に空いている席があるにもかかわらず、征志の隣に座った 。通常、電車やバスの中で、若い女性が男性の隣に座ることは期待されない。男性が若い女性の隣に座ることも期待されない。こうした行為は役割期待とは異なる行動である。
→一般に「危ない」「おかしい」と判断される行動。

何かある!と考えるべきであろう。

<二人の出逢い(行動のきっかけ)>

 宝塚市立中央図書館(清荒神)での本の争奪戦。
 何度か図書館で見かけるが、互いに自分だけが相手を見ていると考えている。
 図書館以外の場所での接触はなかった。

<類似性の親近効果(類似性効果)>

 趣味、出身地、出身校、年齢、笑いのポイント、好みなどが似ている場合(似たもの同士)、同類意識が生じ、相手に親近感を持つ 。
 そうした親近感が好意あるいは恋愛感情に発展することは少なくない。ドラマの中では
「決定的日本の好みが似ている」
と発言され、類似性効果があることを臭わせる。

<ユキの期待>

☆普通の乗客ではしないような男性の隣に座るという行動、普通の大人ならあまりしない半身になって窓の外を見る行動をして、征志の関心を喚起する 。
「あれ見て、話に乗ってくれるような人だったら、きっとこの人のこと好きになるなぁって。」
ここでユキはとりあえず対人的地位としての「恋人」になることを期待して、征志に「かま」をかける。

<征志に反応>

 類似性効果と「好みのタイプ」、そして「生」のオブジェに対する関心から征志はユキのつりに乗る 。もちろんこの時点ではユキの「かま」とは意識していない。征志にとってはコミュニケーションのチャンスだと考えた。

「やっぱり造形かな。線もよれてないし高さもビシッとそろってて、重機でも使ったみたい。 」
→常識的で現実的な回答をおこなう。

 これはユキが期待している答えとは異なる。

<ユキの反応>

「私はね、字の選択のセンスがすごいと思うんです。全部直線で構成できる字なんですよ。だから造りやすい。それでいて目に入ったときのインパクトがすごいでしょう。初めて見つけたとき生ビール呑みたくなっちゃった」
→ユキの理解を紹介する。
 これに対して征志はさらに常識的な反応を行う。
「工事の下準備ですとか、イタズラなので撤去しますとか、現実的な答えが返ってきたら台無し。できればイタズラだったらいいなぁって。こんなにインパクトがあって、誰にも迷惑かからなくて粋なイタズラ、滅多にないから。意味がわからないままでいいから、ずっとあそこにあったらいいなあって 。」

 ユキは常識的、現実的な発想ではなく、ユニークな発想、楽しくなる発想を好む。そしてユキはそうした楽しくなる発想を共有できる人間を求めている。
→相手に対する期待
→恋人に対する役割期待

<征志の役割取得>

 ユキの意見を聞きながら征志の考えが動かされる。
「『なま』のほうだったらいいな」
→相手の意見への同調(役割取得への第一歩)

そして、ユキの「中央図書館、よく来ているでしょ」という発言によって相手も自分を意識していたことを知った。これによって征志の感情はさらに傾いていく。

ユキ「缶ビールじゃなくてジョッキでいきたかったんです」
征志「生ビール、呑むんだった今日でしょ」

こうして二人の恋がはじまる。

 逆瀬川の飲み屋で、二人は図書館に行く日程を決めるシーン。

ユキ「土曜日曜どっち?」
征志「あわせる。」

→征志は相手の意思を尊重する。
→これは相手を理解しようとする試みである。

<相手の理解>

「私たち、闘うの~?」
「これって決めた一杯を大事にするんだ~」
「今から送るとか言われたら泣く」
「征志君は私とこういう風になりたくないのかなと思って不安だった」
「お風呂借りなきゃいけないから」
→征志はユキが自分に好意を持っていることがわかる。
→恋人としての役割期待を理解する

<地位の確立と役割取得>

相手に対して好意がある、相手に気に入られたいと考えている場合、相手の役割期待にこたえようと反応する。
→相手のことを理解しようとする。
→相手に自分のことを伝えようとする。

対人的地位の確立とその役割取得は相互のコミュニケーションによって行われる。接触頻度が多いほど役割取得は円滑化する。
*家族、学校、会社など人間関係が密な集団ほど地位の固定化および役割取得が容易である。

<役割取得の3パターン>
・模倣による社会化
・対人関係でのコミュニケーション
・環境の変化に対する適応


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社会学入門2011 第5講 地位と役割(1) [社会学入門]

社会学入門2011 第5講 地位と役割(1)

今回の教材

「けいおん!(K-ON)」(第1,2話)
監督:山田尚子
シリーズ構成:吉田玲子
制作:京都アニメーション
原作:かきふらい『まんがタイムきらら』『まんがタイムキャラット』(芳文社)連載の4コマ漫画
第1期2009年4月2日から6月25日(TBS深夜枠)
第2期2010年4月6日から9月28日(TBS深夜枠)

<登場人物の何を理解する>

 現在、我々がアニメや漫画、あるいはライトノベルと呼ばれる小説を読むとき、登場人物の何に注目するのだろうか?
もちろん我々がこれらの作品を読むとき、我々は作品のストーリーを読む。しかし現在の読者の多くはストーリーよりもむしろ登場人物の「キャラ」に注目している。実はキャラに注目するということは今に始まったことではない。漫画やアニメが子どもたちの生活に定着した頃から、子どもたちはストーリーだけでなく、自分はどの登場人物が好きだ、ということを主張しだしていた。この特定の登場人物のファンになるということが、キャラへの注目のはじまりである。もちろんこれは漫画やアニメだけのことではない。ストーリーのあるものはすべて同じであろう。歌舞伎や狂言、浄瑠璃などにも通じる。

<キャラって何?>

 登場人物は設定された性格に基づいて行動する。アニメや漫画ではそれぞれの登場人物の性格が同じにならないように、それぞれの特徴が目立つように表現される。
 その際立たされた性格を「キャラ」と呼び、その特徴が顕著であることを「キャラだつ」と表現する。このようなアニメや漫画で用いられるキャラという概念が日常生活の中でも用いられるようになってきた。そして「キャラがかぶった」あるいは「キャラだつようにした」というような表現として表れている。

<けいおんのキャラは?>

ミオ:ベース担当
 「背が高くて格好いい、大人の女性って感じ」
 「(でも)ミオちゃんは少し繊細です」
 「だってギターは恥ずかしい。ギターってバンドの中心って感じで演奏しなきゃいけないし、観客の目も自然と集まるでしょ」

 ☆いわゆる「ツンデレ」系のキャラ

つむぎ(むぎちゃん):キーボード担当
 「おっとりばわぼわかわいい人です」
 「4歳の頃からピアノ習ってたの。コンクールで賞をもらったこともあるわ」
 「なんど軽音部にいるんだろう?」

 ☆お嬢様キャラ
  「むぎちゃんはかなりお嬢様っぽいです。」

りつ:ドラム担当
 「元気いっぱいの明るい女の子」
 ドラムをやっている理由:格好いいから
 「ギターとかキーボードとかちまちましたのを想像しただけでぎゃーってなる」

ゆい:ギター担当
 入学後2週間たっても何をしたらいいかわからない
 「テンポ悪くって使えないドジっ娘」
 軽音→くちぶえみたいな軽い音楽をやると思い込む。

 ☆いわゆる天然系:ドジ娘

真鍋のどか:ゆうの幼なじみ
 太枠めがね→いわゆる委員長タイプ
 「こんな子つかまされて大丈夫かしら、軽音部」

キャラ設定についてのセリフ

 「楽器選びにも性格が出るんだなぁ」
 「めったに出会えない、とっても楽しくて愉快な人たちの仲間になりたかったの~」
 「珍獣ってことですか?」

<キャラ設定の仕方>

「けいおん!」のキャラ設定はどのように行われたのか?

 主要登場人物は楽器をもとに設定される。「楽器選びにも性格が出るんだなぁ」ではなく、担当する楽器によってキャラ設定が行われている。

 ゆいの幼なじみについてはクラスの中の委員長、あるいは将来の生徒会長ということを想定してキャラ設定が行われている。
→それほどしっかりしているということ。

<担当する楽器、委員長は何を指しているのか?>

 バンドの中の楽器やクラスの中の委員長というのは、集団の中でのポジションを意味します。社会学ではこれを「地位」と呼ぶ。

 地位とは? 「集団や社会におけるその人の立場」。我々の社会には地位のない人間はない。地位には次のようなものがある。
娘や母→家庭内の地位
高校生→社会の中の地位
生徒会長→学校内での地位

など。

<地位の種類>

 地位にはいくつかの種類がある。

人との関係性の側面からみた場合、

 構造的地位
 対人的地位

時間という側面からみた場合、

 一時的地位
 恒常的地位

など。
 これらの地位は実際には明確に区別されるわけではなく、同時に複数の地位に所属したり、瞬時に入れ替わったりする。


<構造的地位>

 職業、年齢、性差、家族内の立場、社会階層など社会の多くの人が、「共通して」固定的なイメージでとらえる「地位」。いわゆる「社会的地位」(social status)が構造的地位にあたる。
 ドラマの中では次のような構造的地位が使われていた。
高校生、先生、姉妹、母、委員長、社長令嬢、店員など。

<対人的地位>

 最初から集団内の立場が決まっていることはない。集団内の地位は、「他者との関係(相互作用)」のなかで、自覚的あるいは自然に形成される。これを「対人的地位」という。
 対人的地位が多くの人に認められ、固定的なイメージでとらえられるようになったとき、「構造的地位」に移行する。

 アニメ(ドラマ)のなかで描かれた対人的地位には次のようなものがある。

 唯と真鍋のどかの関係
 →ボケとツッコミのような関係
 →面倒をみる立場と面倒をみられる立場

 軽音部の4人の関係
 →対人的地位は他者との関係のなかで形成されるものであるが、アニメのなかでは関係が形成される前からある程度の地位が確立されていた。これはキャラとして最初から設定されていたからである。

<一時的地位>

 その場の状況によって一時的に占める地位を「一時的地位」という。電車やバスの乗客、デパートの客、通行人など。アニメの中では、店の客やバスの乗客などが一時的地位にあたる。
 「常連客」や「顧客」は一時的地位ではない。

<恒常的地位>

 長期間(場合によっては生涯にわたって)占める地位を恒常的地位と呼ぶ。恒常的地位の大部分は構造的地位である。アニメでは姉、妹、母、娘、教員、会社員などが恒常的地位として用いられた。「生徒」は一時的地位というよりは長期にわたるため、恒常的地位と考えられる。


地位とは人が所属する枠組み(器)=ハードウェアにあたる。それではその器の中身は何か? 地位の中身にあたるのは「役割」であり、地位をハードウェアとすれば、役割はソフトウェアになる。

<役割とは?>

 役割とは、地位に期待され、望まれ、あらかじめ用意された行動様式のことである。
 安定した社会では、地位と役割は対応している。

構造的地位ー構造的役割
対人的役割ー対人的役割
恒常的地位ー恒常的役割
一時的地位ー一時的役割

 日常生活のなかで我々は相互に相手の地位に対して役割を期待しているこれを「役割期待」と呼ぶ。地位にふさわしい行動を「役割」として期待している。

<キャラの源泉>

 キャラの発想のもと(源泉)は社会学の「役割」という概念にある。作品の中で登場人物は、与えられた「地位」に対応する役割通りに行動しているということ。
 ただし作品によっては地位より先にキャラ(役割)が独立して構成される場合がある。その場合、そのキャラはその作品とは無関係に別の作品にも登場する。

<期待された役割を取得すること>

 相手の期待する役割を自分の中に取り入れることを「役割取得」と呼ぶ。相互に期待している役割通りに行動することは何を意味するのか。(役割取得の意味)

→集団や社会、その場の秩序が維持される。すなわち平和になり、その場の雰囲気が崩れない。

 相互に役割期待が行われれば、対人関係が良好な状態で維持される。相手を不安な人だと考えない。=安心

<役割取得=社会の安定?>

 それぞれの人間が与えられた役割を取得し、その通りに行動すれば、確かにその社会の秩序は保たれる。相手の行動をあらかじめ予測し、その行動に対応することができる。

 しかしその行動(役割)は本人(登場人物)の意志にそっているのか?

 来週はもう少し詳しく地位と役割について考えてみたい。


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社会学入門2011 第4講 行動と行為(3) [社会学入門]

社会学入門2011 第4講 行動と行為(3)

 前回のドラマについて課題を出しておいた。「理一が映画を撮る行為」を分析するという課題である。今回はまずこの課題の模範解答を紹介したい。

 理一が映画を撮るようになる契機は兄の夢にある。英介(兄)が映画監督になりたいと希望することが契機になっている。ドラマの中で理一自身が語っているように、この契機に対して理一は「兄のまねをしたい」という欲求があった。この欲求を満たすためには「専門の大学に進学して映画監督になる」という目的(目標)を設定する必要がある。そこで彼は自分の資源を検討した。
 理一のセリフにあるように理一の知的レベルは大学進学が可能な程度のレベルに達していた。またドラマの中には登場しないが、おそらく学費を支払うだけの経済力はあった。さて社会のルールに従えば映画監督になるには専門的な勉強が必要だと考えられる。そして何よりも彼の夢は、「自分のやりたいことをやる」ということ。資源と規範を検討した結果、彼は自分が大学に進学して映画監督になるという目的を設定することが可能だと判断した。

 こうして彼は大学へ進学できるように必死になって受験勉強して、無事に映像学科に入学した。そして映画について専門的に勉強し、卒業制作で実際に映画監督になった。

 
 さてこのセクションでは人間の行為について説明してきた。行為として示される行動には大きく二つの様式がある。一つは「手段としての行動」であり、「手段と目的が一致した行動』である。

<手段としての行動>

 多くの行動は「目的」を達成するための「手段」として行われる。
→「~するために~する」

薫と昼間の世界との接続を保つ(目的) → ビデオ撮影(手段)

希望の大学に進学(目的) → 受験勉強する(手段)

お金が必要(目的) → 働く(手段)

「恋人をつくるために合コンする」
「就職するために就活する」
「結婚するために婚活する」
「自分の仕事を続けるために結婚をやめる」
「別れた彼女が別の男性と結ばれるためにペアチケットをプレゼントする」

このように「目的を達成するために手段として行われる行動」を、「目的合理的行為」と呼ぶ。繰り返しになるが、我々人間の大部分の行動は目的合理的行為である。

<手段と目的が一致する行動>

理一の映画撮影の行為は目的と手段としての行動が一致している。いわば「映画が撮りたいから映画を撮る」という行為である。このように行動そのものに価値があると考えて、行動すること自体が目的になっている行動を

価値合理的行為

と呼ぶ。

価値合理的行為は「~したいから~する」あるいは「~するのが楽しいから~する」という様式の行為である。

「理一は映画が撮りたいから映画を撮る」
「恋人と一緒にいるのが楽しいからデートする」
「仕事でキャリアアップするのがうれしいから(リア充)仕事に打ち込む」

 目的と行動との関連から行為を分類すると2つに分類することができる。


 それでは第1回目のリポートの案内を行う。

 課題作品

「仮面ライダー電王」(第1話)
監督:田崎竜太
脚本:小林靖子
プロデュース :梶淳(テレビ朝日)、白倉伸一郎・武部直美(東映)
2007年1月28日から2008年1月20日
*龍騎のスタッフが再結集

リポート課題:

「良太郎の2つの行為の説明」
①良太郎に憑依したモモタロスが鉄パイプで不良を殴ろうとした時、モモタロスの行動を止めた「良太郎の行為」

 なぜ良太郎はモモタロスをとめたのか?

②モモタロスが契約の内容を語ったとき、「悪霊、退散!」と叫んだ行為。

☆説明の根拠をあげて、詳しく論述すること。私は行間の意味をくみ取らない。すべて言葉で表現すること。

この課題は感想文でも作文でもない。小論文として書きなさい。

提出方法は電子メールあるいはMICCS

提出期限:5月26日授業終了時間まで

提出期限に遅れた場合には、提出されなかったものとする。いかなる理由も受け付けない。
なお、リポートが提出されなかった場合には、「F」(不可)とする。


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社会学入門2011 第3講 行動と行為(2) [社会学入門]

社会学入門2011 第3講 行動と行為(2)

まずは前回の続きから。


<資源による目的の限定性>

行為の実行には資源が必要!
 →可能な行為が限定される。
動員できる資源によって設定できる目的の可能性が限られる。

XPという資源によってカオルは昼間の行為や目的が制限される。
夢も目的の一つ。資源によって「夢」もかわる。誰もがどんな夢でも想定できるというのは・・・社会学的にはウソ。

<規範の検討>

「規範」とは?
 →社会成員の行為を拘束する力
規範によって行為の範囲が限定される。
     ↓
「資源」に限りがないとしても、「規範」によって限定されることがある。

Ex.
金持ちになりたいという欲求があっても、「他人のものを盗んではいけない」という規範によって、他人からお金を取ってはいけない。

<規範の種類>

 規範の人間に対する拘束力の強さによって3つに分けられる。

慣習<習律(モーレス)<法

<慣習>

伝統、流行、習俗など

目的や意図を意識しないで、やることになっているから行う行動

Ex.
おじぎ
箸を使って食事をする
しきいをまたぐ

<習律(モーレス)>

慣習のうち、従わないと他人に危害(迷惑)を加えるもの。非公式の制裁が加えられることがある。=村八分の元になった村法など
 →現在は廃れている。
 →現在は「道徳」として維持されている

Ex.
用水路に有害物を流さない
田んぼの害虫を駆除する
カオルが病院の窓から見ている時、孝治はどうしてバイクをおしているのか?

<法>

成文化され、人々を強く拘束します。従わないと公式の制裁が加えられる。

<もし規範がなければ>

資源が動員できる範囲で、個人は欲求のままに行為するようになる可能性がある。
 →犯罪の増加、社会の崩壊

 規範によって私たちは安定した社会生活が可能となり、意識しないで決められたパターン化された行為を行うことができる。

<行為モデルの適用>

 行為モデルを使ってドラマ登場人物の行為を分析したい。

 ドラマの冒頭で薫の親友美咲がビデオ撮影するシーンがある。この美咲がビデオ札絵する行為を分析することにする。
 美咲の行為の刺激(きっかけ、契機)は何か。ドラマの中で薫の高校の卒業写真が映し出される。その写真の中で薫は防護服を着ていた。薫は防護服を着て高校に通学していたことがわかる。しかし現在の薫は夕方に起き出し、夜間活動している。彼女は高校を卒業してから昼間に外出していない。

 これが美咲の行為の刺激(契機)である。こうした薫の行動パターンの変化を受け、美咲は薫のために「親友として何とかしたい」という気持ちになる。これが行為の欲求(動機)である。
 次に資源の検討である。美咲は大学生で昼間も夜間にも自由になる時間があった。さらに服装を見るとさほどお金には不自由していないことがわかる。そして規範を検討することになる。彼女にとって大切なことは「親友は互いに支援しあう(助け合う)」という規範である。
 資源と規範を検討した結果、美咲は薫が離れてしまった「昼間の世界との接続を保つ」ことを「目的」にした。その目的を達成するために行われたのが、「ビデオ撮影」という行動である。

美咲行為.jpg

 これが美咲の行為の分析である。この他にもいろいろな場面の行為を分析すると、登場人物の心情や性質がよく理解できるようになる。それでは今回は別の作品を鑑賞して、さらに分析の練習をしてみたい。

<今回の教材>

「スローダンス」(第1話)
脚本:衛藤凛
演出:永山耕三、成田岳、平野眞
プロデュース:高井一郎、鹿内植
キャスト:妻夫木聡、深津絵里、広末涼子、小林麻央、田中圭
2005年7月4日から9月12日(フジテレビ月9枠)

 今回はこのドラマの中から次のような行為を分析してみたい。

 理一は衣咲を「学校の先生」だと考えていた。それはなぜか?

先生行為.jpg


スローダンス DVD-BOX

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社会学入門2011 第2講 行動と行為(1) [社会学入門]

社会学入門2011 第2講 行動と行為(1)

 我々はドラマで見ているもの、注意の対象となっているものは何か。ドラマのなかに登場する風景や使われる音楽も気になるだろう。しかし最も重要な対象は、登場人物の「しぐさ」、「態度」、「表情」、「セリフ」、「動き」などのいわゆる演技である。ドラマを社会の鏡と考えれば我々は登場人物の行動を見ているということになる。
 それでは今回の教材となる作品を鑑賞したい。登場人物の演技をよく観察して欲しい。
 今回の教材は、

「タイヨウのうた」(第1話)
脚本:渡邉睦月
プロデュース:津留正明、植田博樹
演出:山室大輔、今井夏木、武藤淳
出演:山田孝之、沢尻エリカほか
2006年7月14日~9月15日(TBS、金曜ドラマ22:00~)
スターダストプロモーション純愛三部作完結編
(「セカチュー」、「いまあい」)
劇場版は2006年6月公開


 最初に基本的なことを確認しておく。生物にとっての基本的な行動パターンは、

刺激(変化)→反応(振る舞い)

という図式であらわされる。

 生物の基本的な行動パターンは次のようなパターンである。

光が点灯する → 光の方角に移動する
空腹になる  → 捕食活動(摂食)
水の中に入る → 泳ぐ
梅干しを見る   → 唾液が出る

生物は「刺激」がなければ「反応」としての行動は生じない。ポイントは「同種の生物は同じ刺激に対していつも同じ反応を示す」ということである。
 たとえば昆虫のガは光を見ると光に向かって飛んでいく。ガに光を向けるとどのガもいつも光に向かって飛ぶ。逆にミミズに向かって光を向けると、どのミミズもいつも光とは逆の方向に向かって進む。この行動パターンが変わることはない。

 それでは人間はどうか。ドラマの中でカオルは孝治をみて(刺激)恋に落ちた(反応)。カオルの病気について、医者が死に至る病であることを告知してた。これを聞いた母親は泣き崩れた。これは人間の行動である。

 さて生物においては同種の生物は同じ刺激に対していつも同じ行動を行う。人間はどうだろうか。

好みの異性を見たら、いつも誰もが恋に落ちるのか?

死の宣告に対して、いつも誰もが泣き崩れるのか?

 人間は生物とは異なり、同じ刺激に対していつも誰もが同じ行動をするとは限らない。

 人間は生物とは異なり多様な行動をとる。それは人間の行動パターンが生物とは異なっているからである。図式化すると次のようになる。

刺激(変化)→反応(振る舞い)

刺激(変化)→意味づけ(動機付け)→反応(振る舞い)

<人間の行動>

 ここでまとめておこう。行動(behavior)とは、「人間ならびに人間以外の生物(動物)の活動全般を示す」と定義できる。行動は基本的に観察できる。人間も生物だから行動という点では人間も生物も同じである。ただ生物の行動は生物の意志とは無関係に行われる。人間に当てはめて表現すると、行動とは「意識しないで行われる活動」だと表現できる。
 しかし人間には、行動ではあるが人間独自の行動がある。これを「行為」(act)と呼ぶ。

 行為は行動に含まれるが、行動から外れた部分もある。表面的に見える部分においては行動と同じであるが、その意味が異なる。そこで行為を「象徴(symbol)によって社会的に意味づけられた行動=社会的に意図づけられた行動」と定義したい。前述のように「刺激に」に対する「意味づけ」は個人によって異なる。その結果、人によって「反応」としての行動が変わる。ただ行為の定義によれば、意味づけは個人によって異なるが、その意味は象徴に依存している。

<行動と行為の相違点>

 行動と行為の大きな相違点は「意識」や「意図」が介在するかどうか、という点にあり、行為は「象徴」を利用しているという点が行動を区別される。

 さて我々が利用する象徴とは何か。
 象徴とは、「具体的な事物によって抽象的な概念が表現されること」。

たとえば

結婚指輪  →相手に対する永遠の愛の約束
赤色の下着  →勝負に勝ちたいという気持ち

ギター  →藤代孝治への思い出
歌  →自己表現

<象徴の特徴>

 象徴はその事物が指す「意味」が社会的に共有されなければ、象徴にならない。

Ex.赤色=「危険」ということが共有されないと、「赤信号」はたんなるイルミネーションになる。

 指し示す意味を共有しなければならないという意味では、「言葉」は典型的なシンボルである。

→言葉を使った行動は「行為」。

<行為が象徴になる?>

 行為が象徴になるとはどういうことか。

 たとえば「女性が長かった髪の毛をばっさり切ってショートヘアにした」とする。これは「観察できる事実としての行動」になる。この行動を一つの象徴として受け止めれば、観察できる行動とはまったく異なった、まったく無関係な抽象的な意味と関連づけられる。たとえば「失恋」や「新たな出発への決意」である。このように行動自体が象徴になる場合がある。

 行為は行動の一部ではあるが、象徴によって意味づけられることによって行為となる。人間は他の生物とは異なり、「何もしない行動」という行為がある。たとえば誰かに語りかけられた時、「黙っている」という行動があり得る。

<行為の分析>

 さて我々は行為が個人によって異なった意味を持つと考えている。しかし個人が用いる象徴は社会が共有するものであり、象徴としての行為は他人にもその意味がわかる。したがって個人の行為はそれぞれ異なった行動になったとしても、特定のパターンに限定されているということである。もし自分だけの象徴を用いたとしてもその意味は相手に伝わらない。
 だから我々は行為を分析することによって行為者の動機や意図を推測することができるのである。我々は日常生活の中で相手の行為を理解し、その意味を受け取ることによって相手とのコミュニケーションを行う。行為の理解によって他人とのコミュニケーションが円滑になる。象徴を共有しない、行為を理解できない場合、他人とのコミュニケーションは円滑に行えない。

<行為の枠組み>

 それでは具体的に相手の行為を分析する際、行為をどのように分解して考察したらいいのだろうか。
 社会が共有する象徴を用いることによって行為が行われるように、行為には共通する要素がある。

<行為モデル>

行為モデル.jpg

 刺激(変化)が生じた時、その意味を分析し(意味づけし)、自分がやりたいことやらなければならないこと、あるいは逆にやらないことなどといった「欲求」や「動機」が形成される。
 そうした欲求や動機を充足するためにはどうしたらいいのか、充足のための「目的」が設定され、実際の行動へと移行する。

<欲求充足のための資源や価値の検討>

 目的が設定されたとしても即行動とはいかない。目的達成のためのさまざまな条件の検討が必要になる。条件が満たされなければ目的を修正しなければならない。
 さまざまな条件の一つが<資源>であり、もう一つが<規範>(価値)である。こうした資源や規範の検討が目的設定の前に行われる。資源や規範の検討の結果、動機や欲求の充足のための目的が設定される。

<資源の検討>

 欲求を充足するために利用される資源には次の5つがある。

物資源
能力資源
社会的関係資源(社会資本)
文化資源(文化資本)
情報資源

<物資源>

自然の資源や道具や機械などの人工物。貨幣や資本なども物資源に含まれる。

EX.
サーフィンするためには、「板」と「バイク」(自動車)が必要
エンゲージリングを購入するためには、「お金」が必要
音楽するためには「楽器」が必要  など

<能力資源>

経験、知能、身体能力、読解、技能などの人間の能力全般を指す。

Ex.
イギリスで快適に過ごすためには、英語が話せなければならない。
音楽するためには声楽が演奏の能力
アイドルになるには顔かスタイル、変わった特技 など

カオルの場合、XPが一つの資源になる
イケメン、ソーセージをたこに切る

<社会的関係資源(社会資本)>

人間関係(コネ)、社会的地位、名声など自分以外の他者の力を利用できる資源。
この資源は個人が所有するだけではなく、資本として他の人間に継承できる。
 →二世政治家、二世芸能人、歌舞伎一家

Ex.
人海戦術を展開するためには、つかえる人手が必要。

音楽業界とのコネクション→歌手としてデビューするため
友人も社会資本の一つ。カオルにとってのミサキ

<文化資源(文化資本)>

家族から伝達される文化的財、言語能力、振る舞い、知識など文化にかかわる資源を指す。

Ex.
マルチリンガル
伝統芸能
上流社会の態度
など

家族がいなければ、「家族」という資源から継承する文化資本はない

<情報資源>

本・新聞・雑誌などの文字情報、テレビ・映画などの視覚情報、ラジオ・音楽などの聴覚情報、あるいは国旗・国家・勲章などの象徴などの資源。

現代社会ではパーソナルデータは貴重な情報資源である。誰がどのような社会資本を有しているかという情報は、行為の幅を広げるのに有効。
 →就活を考えればよい。

<資源による目的の限定性>

行為の実行には資源が必要!
 →可能な行為が限定される。
動員できる資源によって設定できる目的の可能性が限られる。

XPという資源によってカオルは昼間の行為や目的が制限される。
夢も目的の一つ。資源によって「夢」もかわる。誰もがどんな夢でも想定できるというのは・・・社会学的にはウソ。

 本日はPCは授業中にフリーズ。時間ぴったりに終わるように講義ノートを作成したが、途中で終わっている。残りは来週の講義で。


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社会学入門2011 第1講 イントロダクション [社会学入門]

社会学入門2011 第1講 イントロダクション、授業内容の説明、社会学でわかること?

 講義の最初に『授業概要(シラバス)』に書かれた内容を確認したいと思います。

<以下、『授業概要』からの抜粋』>

【教育目標】
 漫画、ドラマ、小説を題材に社会学する

【内容】
 社会学は人間関係や集団、社会現象、社会の仕組みなどを対象とする学問です。こうした社会学の対象は私たちの日常生活に密接に関係していて、私たちは特にその内容を吟味したり、説明したりすることなく、「当然のこと」あるいは「常識」としてあまり深く考えません。社会学では私たちが「当然のこと」、「常識」あるいは「自明なこと」として深く考えないことを対象にして、その内容の理解を深めようとします。そのことによって私たちの社会生活がよりスムーズになると考えているからです。
 鏡を見なければ自分自身の姿を見ることができないように、社会学が対象にしているものは、自分自身がその中に含まれているので、そのままでは客観的に観察することが困難です。特に社会学という学問を知らない人には難しく思える面が多いと思われます。そこでこの授業では、皆さんが親しみやすい漫画、TVドラマ、小説を題材にして、社会学的な視点について紹介したいと思います。

【授業の進め方】
 ドラマや小説、漫画などをとりあげ、いくつかの場面をもとに社会学の理論や考え方を紹介します(社会情勢によりトピックが変わる場合があります)。

 1講.   導入
 2~5講. 行動と行為
 6~10講. 地位と役割、演技
 11~15講. その他社会学の理論

 過去の講義ノートをすべて公開しています。確認できる人は履修前に確認しておいてください。もちろん内容は異なりますが、いくつか重複する場合もあります。
http://www.bunkei.net/

【文献】
 教科書はありません。必要な文献については授業中に適宜紹介します。

【成績評価】
 課題リポート(3回実施)。1回でもリポートを提出しなければ「失格」になります。また内容が悪ければ、3回すべて提出しても不合格になります。リポート提出はMICCS(大学独自のレポート提出システム)および電子メールを利用します。

【お知らせ】
 やる気と熱意。積極的な参加意欲を求めます。私語=犯罪として扱います。私語をする学生は教室から退室させる、あるいは履修をやめていただきます。


<以上、『授業概要』からの抜粋>

 授業中の私語の問題について説明します。大学(専門学校や高等学校も基本的に同じ)は、学生から高い授業料を徴収し、授業を販売しています。つまり学生の皆さんは授業という商品を購入しているのです。そして最終的には学士という身分を購入することになります。授業中に「私語」をするということは、他人が購入した商品を壊したり、盗んだりすることと同じです。端的にいえば、授業中に私語をして授業の進行を妨害することは、「犯罪」と同じということになります。私たち教員はお客さんに確実に商品を届ける義務があります。ということは、授業中に犯罪が行われていることを黙ってみているということは許されません。もしも私語という犯罪を見過ごせば、教員は義務不履行になってしまいます。小学校や中学校という義務教育の中では、私語をしている生徒を教室外に出すと、「教育を受ける権利を侵害した」と言われる可能性がありますが、大学では、私語をしている学生を放置している方がまずいのです。従って、大学での授業では私語をしている学生を教室外に出し、授業という商品を購入者に確実に届けられるようにしなければなりません。
 本講義では、私語をしたい学生は最初から教室で授業を受けることを拒否します。私語をしないときだけ授業に出席してください。その上で、3分の2以上の出席をして、商品を受け取ってくださるようにお願いいたします。もしも授業中に私語をしている学生がいたら、私は退出するように指示します。あまりにもひどい状況が続けば、私は授業の販売自体を拒否したいと思います。
 もしもこの条件(契約)に納得できない場合には、履修を取り消してください。この科目は「選択科目」なので、単位を取得しなくても卒業することは可能です。

 本講義では「ドラマ」、「小説」、「マンガ」、「アニメ」などを題材にして勉強していきます。シラバスで説明したように、これらの題材は私たちの行動、私たちの社会を映し出す鏡です。だからこれらの題材を研究するということは私たち自身が気づかない私たち自身のことを研究することになります。とはいえそれがどういうことなのか、実際に説明しないとよくわかりません。
 ということでこれらを題材としてどのようなことがわかるのか、最初に説明してみたいと思います。
今回は皆さんに身近なヒットソングを対象にして考えてみたいと思います。ヒットソングを社会学の視点から分析すると何がわかるのでしょう?



 第1回目の講義の内容ですから、どのような分析をしたのかは、この講義ノートには公開しません。1回目の講義から欠席するなんて普通はありえませんから。もし万一、そういうありえない学生がいたら、というか何らかの理由で欠席してしまった人は、友だちに聞いてください。

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2010社会学入門第15講 まとめ [社会学入門]

社会学入門2010 第15講 まとめ

 今年度の社会学入門、どうも例年よりものりが悪かったです。毎年、毎年、履修生の構成が変わるので、のりのいい年と悪い年があるのは確かですが、今年はもっとも調子が出ない年でした。
 その原因の一つはドラマの固定化。内容に合致するドラマの数が限定されていて私自身がマンネリ化しています。いい意味ではこなれているのですが、悪く表現すれば、飽きてきました。
 原因その二。ドラマという内容自体が学生の皆さんに受けにくくなってきている、ということが影響しています。私が扱う作品は最近のものから古いものまで多岐にわたるのですが、どうも今年の履修生はドラマの見方を知らない人が多いようでした。つまり作品を見て楽しむ、という姿勢が弱かったように感じました。
 原因その三。最初のリポート課題に失敗したということ。毎年第1回目のリポートの課題作品にはヒーローものを取り上げるのですが、その作品がいまいち、受け入れられなかったようです。例年、出演者をみて「おっ」と思わせてきたのですが、今年の作品に出演している俳優さんは少しまだマイナーでした。
 原因その四。アニメ作品を取り上げなかったこと。例年の授業で一番受けるのは、アニメ作品です。アニメ作品を取り上げた後、大変のりが良くなります。
 来年度はこうした反省を踏まえて少し内容を刷新しようと思います。


 さてリポートについてですが、提出されたリポートにざっと目を通しました。必死になってがんばって書いた人も多いのですが、一方で、あいもかわらず字数制限さえ守らない人も少なくありません。ルールを守らなければ単位を取得することはできませんよね。ということで字数制限を守っていないリポートは予告通り、D評価です。1回目、2回目のリポートの内容も悪ければ、全体としての評価もDにします。

 ということで2010年度の社会学入門は終了。
 お疲れ様でした。

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2010社会学入門第14講 社会学理論の応用 [社会学入門]

社会学入門2010 第14講 社会学理論の応用

今回の教材

 『やまとなでしこ 第1話』
  演出:若松節朗
脚本:中園ミホ
  2000年10月9日~2000年12月18日放送
  月9ドラマ

 関東地区のビデオリサーチの調査によると平均視聴率26.4%、最高視聴率は34.2%。月9で放送された恋愛ドラマとしては最後の視聴率30%超えの作品です。毎年のように再放送される人気作品になっています。
 ちなみにフジテレビ系のドラマとしては最初にリメイク権が売れた作品です。

 ドラマのキャッチコピーは「愛は年収」。シンデレラ・ストーリーとはほど遠いモチーフです。そしてこれが神野桜子の「行為」を説明する根本的な「動機(目的)」になっています。神野桜子の行為を支える根本的な動機は「貧乏は嫌! お金持ちになりたい!」です。
 こうして彼女は目的が明確な「目的合理的行為」を実践しています。

 この動機によって形成された行動規範は「幸せ=金持ち」ということです。

金持ちになるためには・・・いろいろな手段が考えられます。たとえば

→働いて稼ぐ
→宝くじを当てる
→犯罪を犯す

などです。

 しかし桜子の場合、「金持ちになる」という目的の手段は

「金持ちと結婚する」

です。

 これは桜子の幼い頃見た夢に関係しています。彼女は幼い頃からシンデレラ・ストーリーにみせられていた影響で、「いつか王子様が迎えに来てくれる」と信じていました。こうした規範が「金持ちになる」という目的に対する手段として、普通の一般的な手段、つまり自力での目的達成ではなく、「金持ちと結婚する」ということが手段になったのです。
 さてこの「金持ちと結婚する」という手段は、「金持ちになる」という最終目的のための手段ではありますが、まずは当面の目的でもあります。
 こうして「金持ちと結婚する」が一つの目的となります。この目的を達成するための手段が「合コンに参加して男を見つける」ということです。この目的合理的行為にはいくつかの資源があります。

→美しさ「私の武器は美貌だ」
→上流階級の行動ー振る舞いと服装
→スッチー(金持ちとの接触の機会が多い)


 さて桜子は何を「基準」に金持ちだと判断しているのでしょうか。桜子は合コンの席で次のような項目を基準にして金持ちだと判断しています。

→職業(社会的地位)
→持ち物
 特に桜子は車のキーがポイントだと話します。またドラマのなかでは馬主であることがキーワードになり、馬主のシンボルのピンが何度も登場します。

お金よりも愛情という人に対しては、ハンサムな貧乏人と金持ちのブタ男とどちらがいい、と聞いています。この比較には「こころ」は登場しないので、愛情とは関係ありませんが。

 こうした桜子の判断基準は桜子のオリジナルの基準なのでしょうか? すでに説明したようにこうした個人の判断基準は、個人の外にある社会規範がもとになっています。つまり桜子が職業や持ち物で人物を判断するのは、社会の一般的な規範と同じであり、その社会規範を桜子が内面化しているからです。
 桜子は特におかしなことをしているわけではありません。多くの人がこうした人物に対する社会規範を内面化し、人を判断しています。ただ桜子は、他の人よりも社会規範の影響を強く受けています。あるいは固執しているので、視聴者はおかしく感じられるのです。


 それでは桜子が中原欧介を「金持ち」だと判断した理由は何でしょうか。

A.医者(医者との合コンだから)
B.馬のネクタイと馬のピンバッチ
C.門番がいる大邸宅に入っていく

★これら3つは、桜子の目に金持ちの象徴として映りました。それで桜子は欧介を金持ちだと判断したのです。

 その後、桜子は欧介を「金持ちではない」と疑いません。他の人間は少しは疑いの目を向けています。何が違うのでしょう。
 一つの理由は前述のように規範の影響を強く受けているからです。しかし第一の理由は別にあります。端的に言えば、「内面化された規範によって自分自身を縛っている」からです。
 桜子は暗示とも呼べるようは「思い込み」に縛られています。桜子は欧介が胸につけている馬主のピンバッチを見た時、欧介を金持ちだと判断しました。これは欧介に「金持ち」というレッテルを貼る、ということです。もちろん桜子は欧介に向かって「あなたは金持ちね!」ということは言いません。これは当然のことです。金持ちだから馬主になるのであって、金持ちは自分自身のことを金持ちだとわかっています。そんな金持ちに向かって、初対面で「あなたは金持ちでしょ!」なんて確認するするわけはありません。
 実はこのドラマのなかでは誰も、相手が金持ちだと確認しません。ただ「貧乏人」であることを確認するだけです。
 さてこのように見ると、桜子は欧介が金持ちであると一方的に思い込んでいるだけで、相手にレッテルを貼っているわけではありません。自分のなかで欧介に「金持ち」というレッテルをはり、そのことを信じ込んでいるのです。桜子は自分が他人に貼ったレッテルによって自分自身の行為に制限を与えてしまいました。つまり欧介を金持ちだとして扱うことです。自分自身が行ったラベリングなのでそれから逃れることは非常に困難です。
 他の人はそうしたラベリングをしていません。だから自分の行為を縛り付けずに状況の変化に対応することができます。
 欧介はというと、最初は桜子が自分のことを金持ちだと思い込んでいることを知りません。だから魚屋ということは明らかにしませんが、特に医者らしいところにはデートに行きません。しかし桜子は少し不自然さを感じつつも自分自身が創り出した思い込みによって欧介が医者でないことに気づかないままデートを続けます。
 欧介は自分が医者に間違われていることに気づいた後も、桜子の思い込みを「利用して」、金持ちの医者である「演技」を続けます。


 桜子のように自分自身の行為の目的が明確な人は、内面化された規範による拘束力が強いと思われます。前述したように行為の目的自体が社会規範によって構成されているからです。

 今回のドラマではあまり強く表現されていませんが、前回のドラマでは自身の役割意識が登場していました。自分自身の役割意識、つまり期待される役割に忠実になろうとする人は、内面化された規範の拘束力が強くなります。役割自体が「規範」だからです。
 ジェンダー意識も同じです。自分の性別役割を強く意識する人、「男は~、女は~」というような性別役割意識を持っている人は、性別によって自分の行為も他人の行為も拘束しようとします。自分自身にも他人にも性別による役割というレッテルを貼りたがるということです。これは自分が自分自身に対して行うラベリングです。
 性別役割意識が強い人はラベリングによる思い込みに縛られます。特に男性は「女は~」という思い込みを強く持っているため、そのレッテルから外れる行動を予測することができません。


 私たちのまわりにはこうした「思い込み」による影響が多く存在します。もっとも大きな影響力を持っているのは、「第一印象」ではないかと思います。

第一印象の影響力は・・・強い。
 →最初に受けた印象はなかなかとれない。

第一印象が自分によって構成されたものなら、なおさら払拭できない。

最初にこういう人だと自分で思い込んだ場合、それが規範になって自分を縛り付ける。


「思い込み」の形成や構成についてじっくり考えてみてください。


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2010社会学入門第13講 最終リポート [社会学入門]

社会学入門2010 第13講 最終リポート

第3回リポート

課題作品

 『BOSS 第1話』
  演出:光野道夫
 脚本:林 宏司     (コードブルーの脚本家)
2009年4月16日~2009年6月25日放送
木曜劇場枠
キャッチコピー:「さっさと逮捕して、遊びに行くわよ」

リポート課題

「小野田・屋田・丹波はなぜだまされたのか?ー社会理論の応用」

捜査一課係長の小野田、参事官の屋田、刑事部長の丹波は、大澤の策略にみごとにひっかかりだまされる。だまされた理由を講義のなかで扱った社会学理論を使って説明しなさい。

リポートの注意事項

この課題は感想文でも作文でもない。小論文として書きなさい。

【提出方法】

電子メールに添付して提出する
MICCSを利用して提出する

リポートの注意事項

体裁については制限をもうけない。
分量については800字以上とします。分量の制限に違反した場合は、「D」とします。

リポート提出期限

7月29日17:00まで

提出期限に遅れた場合には、提出されなかったものとする。いかなる理由も受け付けない。
なお、リポートが提出されなかった場合には、「F」(失格)とする。

 過去2回のリポートを提出していない人はすでに「失格」になっています。また過去2回のリポートの内容が悪かった人は、今回の最終レポートで挽回しないと、「不可」になります。
 これまでの授業の内容を復習してしっかり考えてリポートを作成しましょう。



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