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社会学入門2011 第2講 行動と行為(1) [社会学入門]

社会学入門2011 第2講 行動と行為(1)

 我々はドラマで見ているもの、注意の対象となっているものは何か。ドラマのなかに登場する風景や使われる音楽も気になるだろう。しかし最も重要な対象は、登場人物の「しぐさ」、「態度」、「表情」、「セリフ」、「動き」などのいわゆる演技である。ドラマを社会の鏡と考えれば我々は登場人物の行動を見ているということになる。
 それでは今回の教材となる作品を鑑賞したい。登場人物の演技をよく観察して欲しい。
 今回の教材は、

「タイヨウのうた」(第1話)
脚本:渡邉睦月
プロデュース:津留正明、植田博樹
演出:山室大輔、今井夏木、武藤淳
出演:山田孝之、沢尻エリカほか
2006年7月14日~9月15日(TBS、金曜ドラマ22:00~)
スターダストプロモーション純愛三部作完結編
(「セカチュー」、「いまあい」)
劇場版は2006年6月公開


 最初に基本的なことを確認しておく。生物にとっての基本的な行動パターンは、

刺激(変化)→反応(振る舞い)

という図式であらわされる。

 生物の基本的な行動パターンは次のようなパターンである。

光が点灯する → 光の方角に移動する
空腹になる  → 捕食活動(摂食)
水の中に入る → 泳ぐ
梅干しを見る   → 唾液が出る

生物は「刺激」がなければ「反応」としての行動は生じない。ポイントは「同種の生物は同じ刺激に対していつも同じ反応を示す」ということである。
 たとえば昆虫のガは光を見ると光に向かって飛んでいく。ガに光を向けるとどのガもいつも光に向かって飛ぶ。逆にミミズに向かって光を向けると、どのミミズもいつも光とは逆の方向に向かって進む。この行動パターンが変わることはない。

 それでは人間はどうか。ドラマの中でカオルは孝治をみて(刺激)恋に落ちた(反応)。カオルの病気について、医者が死に至る病であることを告知してた。これを聞いた母親は泣き崩れた。これは人間の行動である。

 さて生物においては同種の生物は同じ刺激に対していつも同じ行動を行う。人間はどうだろうか。

好みの異性を見たら、いつも誰もが恋に落ちるのか?

死の宣告に対して、いつも誰もが泣き崩れるのか?

 人間は生物とは異なり、同じ刺激に対していつも誰もが同じ行動をするとは限らない。

 人間は生物とは異なり多様な行動をとる。それは人間の行動パターンが生物とは異なっているからである。図式化すると次のようになる。

刺激(変化)→反応(振る舞い)

刺激(変化)→意味づけ(動機付け)→反応(振る舞い)

<人間の行動>

 ここでまとめておこう。行動(behavior)とは、「人間ならびに人間以外の生物(動物)の活動全般を示す」と定義できる。行動は基本的に観察できる。人間も生物だから行動という点では人間も生物も同じである。ただ生物の行動は生物の意志とは無関係に行われる。人間に当てはめて表現すると、行動とは「意識しないで行われる活動」だと表現できる。
 しかし人間には、行動ではあるが人間独自の行動がある。これを「行為」(act)と呼ぶ。

 行為は行動に含まれるが、行動から外れた部分もある。表面的に見える部分においては行動と同じであるが、その意味が異なる。そこで行為を「象徴(symbol)によって社会的に意味づけられた行動=社会的に意図づけられた行動」と定義したい。前述のように「刺激に」に対する「意味づけ」は個人によって異なる。その結果、人によって「反応」としての行動が変わる。ただ行為の定義によれば、意味づけは個人によって異なるが、その意味は象徴に依存している。

<行動と行為の相違点>

 行動と行為の大きな相違点は「意識」や「意図」が介在するかどうか、という点にあり、行為は「象徴」を利用しているという点が行動を区別される。

 さて我々が利用する象徴とは何か。
 象徴とは、「具体的な事物によって抽象的な概念が表現されること」。

たとえば

結婚指輪  →相手に対する永遠の愛の約束
赤色の下着  →勝負に勝ちたいという気持ち

ギター  →藤代孝治への思い出
歌  →自己表現

<象徴の特徴>

 象徴はその事物が指す「意味」が社会的に共有されなければ、象徴にならない。

Ex.赤色=「危険」ということが共有されないと、「赤信号」はたんなるイルミネーションになる。

 指し示す意味を共有しなければならないという意味では、「言葉」は典型的なシンボルである。

→言葉を使った行動は「行為」。

<行為が象徴になる?>

 行為が象徴になるとはどういうことか。

 たとえば「女性が長かった髪の毛をばっさり切ってショートヘアにした」とする。これは「観察できる事実としての行動」になる。この行動を一つの象徴として受け止めれば、観察できる行動とはまったく異なった、まったく無関係な抽象的な意味と関連づけられる。たとえば「失恋」や「新たな出発への決意」である。このように行動自体が象徴になる場合がある。

 行為は行動の一部ではあるが、象徴によって意味づけられることによって行為となる。人間は他の生物とは異なり、「何もしない行動」という行為がある。たとえば誰かに語りかけられた時、「黙っている」という行動があり得る。

<行為の分析>

 さて我々は行為が個人によって異なった意味を持つと考えている。しかし個人が用いる象徴は社会が共有するものであり、象徴としての行為は他人にもその意味がわかる。したがって個人の行為はそれぞれ異なった行動になったとしても、特定のパターンに限定されているということである。もし自分だけの象徴を用いたとしてもその意味は相手に伝わらない。
 だから我々は行為を分析することによって行為者の動機や意図を推測することができるのである。我々は日常生活の中で相手の行為を理解し、その意味を受け取ることによって相手とのコミュニケーションを行う。行為の理解によって他人とのコミュニケーションが円滑になる。象徴を共有しない、行為を理解できない場合、他人とのコミュニケーションは円滑に行えない。

<行為の枠組み>

 それでは具体的に相手の行為を分析する際、行為をどのように分解して考察したらいいのだろうか。
 社会が共有する象徴を用いることによって行為が行われるように、行為には共通する要素がある。

<行為モデル>

行為モデル.jpg

 刺激(変化)が生じた時、その意味を分析し(意味づけし)、自分がやりたいことやらなければならないこと、あるいは逆にやらないことなどといった「欲求」や「動機」が形成される。
 そうした欲求や動機を充足するためにはどうしたらいいのか、充足のための「目的」が設定され、実際の行動へと移行する。

<欲求充足のための資源や価値の検討>

 目的が設定されたとしても即行動とはいかない。目的達成のためのさまざまな条件の検討が必要になる。条件が満たされなければ目的を修正しなければならない。
 さまざまな条件の一つが<資源>であり、もう一つが<規範>(価値)である。こうした資源や規範の検討が目的設定の前に行われる。資源や規範の検討の結果、動機や欲求の充足のための目的が設定される。

<資源の検討>

 欲求を充足するために利用される資源には次の5つがある。

物資源
能力資源
社会的関係資源(社会資本)
文化資源(文化資本)
情報資源

<物資源>

自然の資源や道具や機械などの人工物。貨幣や資本なども物資源に含まれる。

EX.
サーフィンするためには、「板」と「バイク」(自動車)が必要
エンゲージリングを購入するためには、「お金」が必要
音楽するためには「楽器」が必要  など

<能力資源>

経験、知能、身体能力、読解、技能などの人間の能力全般を指す。

Ex.
イギリスで快適に過ごすためには、英語が話せなければならない。
音楽するためには声楽が演奏の能力
アイドルになるには顔かスタイル、変わった特技 など

カオルの場合、XPが一つの資源になる
イケメン、ソーセージをたこに切る

<社会的関係資源(社会資本)>

人間関係(コネ)、社会的地位、名声など自分以外の他者の力を利用できる資源。
この資源は個人が所有するだけではなく、資本として他の人間に継承できる。
 →二世政治家、二世芸能人、歌舞伎一家

Ex.
人海戦術を展開するためには、つかえる人手が必要。

音楽業界とのコネクション→歌手としてデビューするため
友人も社会資本の一つ。カオルにとってのミサキ

<文化資源(文化資本)>

家族から伝達される文化的財、言語能力、振る舞い、知識など文化にかかわる資源を指す。

Ex.
マルチリンガル
伝統芸能
上流社会の態度
など

家族がいなければ、「家族」という資源から継承する文化資本はない

<情報資源>

本・新聞・雑誌などの文字情報、テレビ・映画などの視覚情報、ラジオ・音楽などの聴覚情報、あるいは国旗・国家・勲章などの象徴などの資源。

現代社会ではパーソナルデータは貴重な情報資源である。誰がどのような社会資本を有しているかという情報は、行為の幅を広げるのに有効。
 →就活を考えればよい。

<資源による目的の限定性>

行為の実行には資源が必要!
 →可能な行為が限定される。
動員できる資源によって設定できる目的の可能性が限られる。

XPという資源によってカオルは昼間の行為や目的が制限される。
夢も目的の一つ。資源によって「夢」もかわる。誰もがどんな夢でも想定できるというのは・・・社会学的にはウソ。

 本日はPCは授業中にフリーズ。時間ぴったりに終わるように講義ノートを作成したが、途中で終わっている。残りは来週の講義で。


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  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



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