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2010社会学入門第14講 社会学理論の応用 [社会学入門]

社会学入門2010 第14講 社会学理論の応用

今回の教材

 『やまとなでしこ 第1話』
  演出:若松節朗
脚本:中園ミホ
  2000年10月9日~2000年12月18日放送
  月9ドラマ

 関東地区のビデオリサーチの調査によると平均視聴率26.4%、最高視聴率は34.2%。月9で放送された恋愛ドラマとしては最後の視聴率30%超えの作品です。毎年のように再放送される人気作品になっています。
 ちなみにフジテレビ系のドラマとしては最初にリメイク権が売れた作品です。

 ドラマのキャッチコピーは「愛は年収」。シンデレラ・ストーリーとはほど遠いモチーフです。そしてこれが神野桜子の「行為」を説明する根本的な「動機(目的)」になっています。神野桜子の行為を支える根本的な動機は「貧乏は嫌! お金持ちになりたい!」です。
 こうして彼女は目的が明確な「目的合理的行為」を実践しています。

 この動機によって形成された行動規範は「幸せ=金持ち」ということです。

金持ちになるためには・・・いろいろな手段が考えられます。たとえば

→働いて稼ぐ
→宝くじを当てる
→犯罪を犯す

などです。

 しかし桜子の場合、「金持ちになる」という目的の手段は

「金持ちと結婚する」

です。

 これは桜子の幼い頃見た夢に関係しています。彼女は幼い頃からシンデレラ・ストーリーにみせられていた影響で、「いつか王子様が迎えに来てくれる」と信じていました。こうした規範が「金持ちになる」という目的に対する手段として、普通の一般的な手段、つまり自力での目的達成ではなく、「金持ちと結婚する」ということが手段になったのです。
 さてこの「金持ちと結婚する」という手段は、「金持ちになる」という最終目的のための手段ではありますが、まずは当面の目的でもあります。
 こうして「金持ちと結婚する」が一つの目的となります。この目的を達成するための手段が「合コンに参加して男を見つける」ということです。この目的合理的行為にはいくつかの資源があります。

→美しさ「私の武器は美貌だ」
→上流階級の行動ー振る舞いと服装
→スッチー(金持ちとの接触の機会が多い)


 さて桜子は何を「基準」に金持ちだと判断しているのでしょうか。桜子は合コンの席で次のような項目を基準にして金持ちだと判断しています。

→職業(社会的地位)
→持ち物
 特に桜子は車のキーがポイントだと話します。またドラマのなかでは馬主であることがキーワードになり、馬主のシンボルのピンが何度も登場します。

お金よりも愛情という人に対しては、ハンサムな貧乏人と金持ちのブタ男とどちらがいい、と聞いています。この比較には「こころ」は登場しないので、愛情とは関係ありませんが。

 こうした桜子の判断基準は桜子のオリジナルの基準なのでしょうか? すでに説明したようにこうした個人の判断基準は、個人の外にある社会規範がもとになっています。つまり桜子が職業や持ち物で人物を判断するのは、社会の一般的な規範と同じであり、その社会規範を桜子が内面化しているからです。
 桜子は特におかしなことをしているわけではありません。多くの人がこうした人物に対する社会規範を内面化し、人を判断しています。ただ桜子は、他の人よりも社会規範の影響を強く受けています。あるいは固執しているので、視聴者はおかしく感じられるのです。


 それでは桜子が中原欧介を「金持ち」だと判断した理由は何でしょうか。

A.医者(医者との合コンだから)
B.馬のネクタイと馬のピンバッチ
C.門番がいる大邸宅に入っていく

★これら3つは、桜子の目に金持ちの象徴として映りました。それで桜子は欧介を金持ちだと判断したのです。

 その後、桜子は欧介を「金持ちではない」と疑いません。他の人間は少しは疑いの目を向けています。何が違うのでしょう。
 一つの理由は前述のように規範の影響を強く受けているからです。しかし第一の理由は別にあります。端的に言えば、「内面化された規範によって自分自身を縛っている」からです。
 桜子は暗示とも呼べるようは「思い込み」に縛られています。桜子は欧介が胸につけている馬主のピンバッチを見た時、欧介を金持ちだと判断しました。これは欧介に「金持ち」というレッテルを貼る、ということです。もちろん桜子は欧介に向かって「あなたは金持ちね!」ということは言いません。これは当然のことです。金持ちだから馬主になるのであって、金持ちは自分自身のことを金持ちだとわかっています。そんな金持ちに向かって、初対面で「あなたは金持ちでしょ!」なんて確認するするわけはありません。
 実はこのドラマのなかでは誰も、相手が金持ちだと確認しません。ただ「貧乏人」であることを確認するだけです。
 さてこのように見ると、桜子は欧介が金持ちであると一方的に思い込んでいるだけで、相手にレッテルを貼っているわけではありません。自分のなかで欧介に「金持ち」というレッテルをはり、そのことを信じ込んでいるのです。桜子は自分が他人に貼ったレッテルによって自分自身の行為に制限を与えてしまいました。つまり欧介を金持ちだとして扱うことです。自分自身が行ったラベリングなのでそれから逃れることは非常に困難です。
 他の人はそうしたラベリングをしていません。だから自分の行為を縛り付けずに状況の変化に対応することができます。
 欧介はというと、最初は桜子が自分のことを金持ちだと思い込んでいることを知りません。だから魚屋ということは明らかにしませんが、特に医者らしいところにはデートに行きません。しかし桜子は少し不自然さを感じつつも自分自身が創り出した思い込みによって欧介が医者でないことに気づかないままデートを続けます。
 欧介は自分が医者に間違われていることに気づいた後も、桜子の思い込みを「利用して」、金持ちの医者である「演技」を続けます。


 桜子のように自分自身の行為の目的が明確な人は、内面化された規範による拘束力が強いと思われます。前述したように行為の目的自体が社会規範によって構成されているからです。

 今回のドラマではあまり強く表現されていませんが、前回のドラマでは自身の役割意識が登場していました。自分自身の役割意識、つまり期待される役割に忠実になろうとする人は、内面化された規範の拘束力が強くなります。役割自体が「規範」だからです。
 ジェンダー意識も同じです。自分の性別役割を強く意識する人、「男は~、女は~」というような性別役割意識を持っている人は、性別によって自分の行為も他人の行為も拘束しようとします。自分自身にも他人にも性別による役割というレッテルを貼りたがるということです。これは自分が自分自身に対して行うラベリングです。
 性別役割意識が強い人はラベリングによる思い込みに縛られます。特に男性は「女は~」という思い込みを強く持っているため、そのレッテルから外れる行動を予測することができません。


 私たちのまわりにはこうした「思い込み」による影響が多く存在します。もっとも大きな影響力を持っているのは、「第一印象」ではないかと思います。

第一印象の影響力は・・・強い。
 →最初に受けた印象はなかなかとれない。

第一印象が自分によって構成されたものなら、なおさら払拭できない。

最初にこういう人だと自分で思い込んだ場合、それが規範になって自分を縛り付ける。


「思い込み」の形成や構成についてじっくり考えてみてください。


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  • 出版社/メーカー: フジテレビ
  • メディア: DVD



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