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社会学入門2011 第5講 地位と役割(1) [社会学入門]

社会学入門2011 第5講 地位と役割(1)

今回の教材

「けいおん!(K-ON)」(第1,2話)
監督:山田尚子
シリーズ構成:吉田玲子
制作:京都アニメーション
原作:かきふらい『まんがタイムきらら』『まんがタイムキャラット』(芳文社)連載の4コマ漫画
第1期2009年4月2日から6月25日(TBS深夜枠)
第2期2010年4月6日から9月28日(TBS深夜枠)

<登場人物の何を理解する>

 現在、我々がアニメや漫画、あるいはライトノベルと呼ばれる小説を読むとき、登場人物の何に注目するのだろうか?
もちろん我々がこれらの作品を読むとき、我々は作品のストーリーを読む。しかし現在の読者の多くはストーリーよりもむしろ登場人物の「キャラ」に注目している。実はキャラに注目するということは今に始まったことではない。漫画やアニメが子どもたちの生活に定着した頃から、子どもたちはストーリーだけでなく、自分はどの登場人物が好きだ、ということを主張しだしていた。この特定の登場人物のファンになるということが、キャラへの注目のはじまりである。もちろんこれは漫画やアニメだけのことではない。ストーリーのあるものはすべて同じであろう。歌舞伎や狂言、浄瑠璃などにも通じる。

<キャラって何?>

 登場人物は設定された性格に基づいて行動する。アニメや漫画ではそれぞれの登場人物の性格が同じにならないように、それぞれの特徴が目立つように表現される。
 その際立たされた性格を「キャラ」と呼び、その特徴が顕著であることを「キャラだつ」と表現する。このようなアニメや漫画で用いられるキャラという概念が日常生活の中でも用いられるようになってきた。そして「キャラがかぶった」あるいは「キャラだつようにした」というような表現として表れている。

<けいおんのキャラは?>

ミオ:ベース担当
 「背が高くて格好いい、大人の女性って感じ」
 「(でも)ミオちゃんは少し繊細です」
 「だってギターは恥ずかしい。ギターってバンドの中心って感じで演奏しなきゃいけないし、観客の目も自然と集まるでしょ」

 ☆いわゆる「ツンデレ」系のキャラ

つむぎ(むぎちゃん):キーボード担当
 「おっとりばわぼわかわいい人です」
 「4歳の頃からピアノ習ってたの。コンクールで賞をもらったこともあるわ」
 「なんど軽音部にいるんだろう?」

 ☆お嬢様キャラ
  「むぎちゃんはかなりお嬢様っぽいです。」

りつ:ドラム担当
 「元気いっぱいの明るい女の子」
 ドラムをやっている理由:格好いいから
 「ギターとかキーボードとかちまちましたのを想像しただけでぎゃーってなる」

ゆい:ギター担当
 入学後2週間たっても何をしたらいいかわからない
 「テンポ悪くって使えないドジっ娘」
 軽音→くちぶえみたいな軽い音楽をやると思い込む。

 ☆いわゆる天然系:ドジ娘

真鍋のどか:ゆうの幼なじみ
 太枠めがね→いわゆる委員長タイプ
 「こんな子つかまされて大丈夫かしら、軽音部」

キャラ設定についてのセリフ

 「楽器選びにも性格が出るんだなぁ」
 「めったに出会えない、とっても楽しくて愉快な人たちの仲間になりたかったの~」
 「珍獣ってことですか?」

<キャラ設定の仕方>

「けいおん!」のキャラ設定はどのように行われたのか?

 主要登場人物は楽器をもとに設定される。「楽器選びにも性格が出るんだなぁ」ではなく、担当する楽器によってキャラ設定が行われている。

 ゆいの幼なじみについてはクラスの中の委員長、あるいは将来の生徒会長ということを想定してキャラ設定が行われている。
→それほどしっかりしているということ。

<担当する楽器、委員長は何を指しているのか?>

 バンドの中の楽器やクラスの中の委員長というのは、集団の中でのポジションを意味します。社会学ではこれを「地位」と呼ぶ。

 地位とは? 「集団や社会におけるその人の立場」。我々の社会には地位のない人間はない。地位には次のようなものがある。
娘や母→家庭内の地位
高校生→社会の中の地位
生徒会長→学校内での地位

など。

<地位の種類>

 地位にはいくつかの種類がある。

人との関係性の側面からみた場合、

 構造的地位
 対人的地位

時間という側面からみた場合、

 一時的地位
 恒常的地位

など。
 これらの地位は実際には明確に区別されるわけではなく、同時に複数の地位に所属したり、瞬時に入れ替わったりする。


<構造的地位>

 職業、年齢、性差、家族内の立場、社会階層など社会の多くの人が、「共通して」固定的なイメージでとらえる「地位」。いわゆる「社会的地位」(social status)が構造的地位にあたる。
 ドラマの中では次のような構造的地位が使われていた。
高校生、先生、姉妹、母、委員長、社長令嬢、店員など。

<対人的地位>

 最初から集団内の立場が決まっていることはない。集団内の地位は、「他者との関係(相互作用)」のなかで、自覚的あるいは自然に形成される。これを「対人的地位」という。
 対人的地位が多くの人に認められ、固定的なイメージでとらえられるようになったとき、「構造的地位」に移行する。

 アニメ(ドラマ)のなかで描かれた対人的地位には次のようなものがある。

 唯と真鍋のどかの関係
 →ボケとツッコミのような関係
 →面倒をみる立場と面倒をみられる立場

 軽音部の4人の関係
 →対人的地位は他者との関係のなかで形成されるものであるが、アニメのなかでは関係が形成される前からある程度の地位が確立されていた。これはキャラとして最初から設定されていたからである。

<一時的地位>

 その場の状況によって一時的に占める地位を「一時的地位」という。電車やバスの乗客、デパートの客、通行人など。アニメの中では、店の客やバスの乗客などが一時的地位にあたる。
 「常連客」や「顧客」は一時的地位ではない。

<恒常的地位>

 長期間(場合によっては生涯にわたって)占める地位を恒常的地位と呼ぶ。恒常的地位の大部分は構造的地位である。アニメでは姉、妹、母、娘、教員、会社員などが恒常的地位として用いられた。「生徒」は一時的地位というよりは長期にわたるため、恒常的地位と考えられる。


地位とは人が所属する枠組み(器)=ハードウェアにあたる。それではその器の中身は何か? 地位の中身にあたるのは「役割」であり、地位をハードウェアとすれば、役割はソフトウェアになる。

<役割とは?>

 役割とは、地位に期待され、望まれ、あらかじめ用意された行動様式のことである。
 安定した社会では、地位と役割は対応している。

構造的地位ー構造的役割
対人的役割ー対人的役割
恒常的地位ー恒常的役割
一時的地位ー一時的役割

 日常生活のなかで我々は相互に相手の地位に対して役割を期待しているこれを「役割期待」と呼ぶ。地位にふさわしい行動を「役割」として期待している。

<キャラの源泉>

 キャラの発想のもと(源泉)は社会学の「役割」という概念にある。作品の中で登場人物は、与えられた「地位」に対応する役割通りに行動しているということ。
 ただし作品によっては地位より先にキャラ(役割)が独立して構成される場合がある。その場合、そのキャラはその作品とは無関係に別の作品にも登場する。

<期待された役割を取得すること>

 相手の期待する役割を自分の中に取り入れることを「役割取得」と呼ぶ。相互に期待している役割通りに行動することは何を意味するのか。(役割取得の意味)

→集団や社会、その場の秩序が維持される。すなわち平和になり、その場の雰囲気が崩れない。

 相互に役割期待が行われれば、対人関係が良好な状態で維持される。相手を不安な人だと考えない。=安心

<役割取得=社会の安定?>

 それぞれの人間が与えられた役割を取得し、その通りに行動すれば、確かにその社会の秩序は保たれる。相手の行動をあらかじめ予測し、その行動に対応することができる。

 しかしその行動(役割)は本人(登場人物)の意志にそっているのか?

 来週はもう少し詳しく地位と役割について考えてみたい。


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