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2009映画の社会学 第13講 知的触媒として扱う方法(2) [映画の社会学]

2009年度  映画の社会学 第13 知的触媒として扱う方法(2)

今回の対象作品
『ブタがいた教室』(2008年公開) 監督:前田哲 製作:佐藤直樹 プロデューサー:椋樹弘尚、田中正、廣瀬和宏、小川勝広 脚本:小林弘利 原作:黒田恭史、2003、『豚のPちゃんと32人の小学生 命の授業900日』ミネルヴァ書房 1990-92年、大阪の小学校の実話

映画の演出上の特徴

 ドキュメンタリータッチな演出。
 →豚を飼う様子をとらえたシーン
 →子どもたちだけの行動をとらえたシーン

☆特に教室での子どもたちの話し合いのシーン

 ドキュメンタリータッチな演出の理由

 実話であるということを想起させる =フィクションではない
 映画が教育現場で用いられることを想定し、視聴する子どもたちにリアリティを与えるため。
  →そのためには、指導された「演技」ではなく、より自然な反応を導き出す必要がある。


自然な反応を導き出すための工夫

 子どもたちにはセリフが書かれた台本を渡していない。
  →子どもたちは与えられたセリフではなく、自分たちの感じたことを発言している。
  →合いの手やチャチャも子どもたちのアドリブ (公式ホームページにかかれている)

 セリフや筋書きを知っているのは大人だけ
  →教室のシーンでは先生役の妻夫木だけにセリフが与えられている。しかし妻夫木はセリフ通りに話していては子どもたちの反応に合わない。そこで彼は「先生」になりきらなければならなかった。

→本当の先生と生徒のように (演出は最低限におさえられた)


実話を元にした映画の難しさ based on true story

 実話を元に映画化された作品は多い。しかしながら、・・・

 実在の人物の生活をそのまま時間軸通りに描いても、平凡すぎて感動がない。
 →時間軸を編集する。900日から1年へ

 人物設定を大きく変更すると実在の人間から離れてしまい、実話をもとにする意味がない。
 →実在の人物を彷彿させる設定にする。 →登場人物を知っている人を納得させる。

 実在の人物のメッセージをできるだけ忠実に再現。
 →映画向きに脚色。

 実話を元にした映画の例

『エリン・ブロコビッチ』(2000)ージュリア・ロバーツ
『タイタンズを忘れない』(2000)-デンゼル・ワシントン
『オールド・ルーキー』(2002)ーデニス・クエイド
『スタンドアップ』(2005)-シャーリーズ・セロン

『Life 天国で君に逢えたなら』(2007)
『フラガール』(2006)


映画のメッセージについて考える

 人間は他の生物の生命を犠牲にして生きている。
  →人間の原罪

上記のメッセージを教育現場で「教える」にはどのような手段が適切か?


食材を選択する
 国や民族によって食材が変わる
 鯨を食べない
 たこを食べない
 犬を食べない

 公園にいる鳩を食べない
 豚を食べない ・・・

人間は自己中心的でわがままだ。食材を選択するのだから・・・。

映画のメッセージについて考える

 動物の肉を食べる=動物を殺す
 →この関係を理解していない子どもがいる。

自分が食べている肉について 何も知らない子どもたち
どうして何も知らなくなったのだろうか?

 我々が食べている肉は、加工された形で、スーパーで販売されている。
  →我々は生きている動物を殺して加工しているということをほとんど意識しない。
  →食肉用の家畜が生きている姿を我々はほとんど見ない。

 牧場にいる牛を見て「おいしそう」と考える人はいない。

他の動物のことを知らない子ども
 食材についても知らない子どもたちは、実際の動物がどのような容姿かもよく知らない。都市部では家畜に遭遇することもなく、実際に鶏や豚、牛などに触れられない。また実際に動物をみたとしても、それが食材になるとは意識できないようだ。


他の生物の生命をうばいとる という人間の原罪を教育現場で・・・

 戦後数年間は、生きた動物(鳥や豚など)が市場で売られていた。それを自宅で殺して食べた。そのほかの食材についても自分たちで収穫したり、採集したりして入手してきた。
 産業構造の変化とともに家庭で行われていたこれらの作業を企業が代行して行うようになる。
 その結果、我々は加工された食材を購入して消費するようになった。


他の生物の生命をうばいとる という人間の原罪を教育現場で・・・

 他の生物の生命を「いただく」ということを実感させるためには、「体験」させるのが適切。

 しかし様々な理由によってこれらの「体験」教育が実施困難になっている。


体験授業が困難になっているわけ
 週休2日、ゆとり教育の関係で授業時間数が減少。特に理科は実験時間が確保できなくなった。
 豚を育てて食べるという課題にはかなり授業時間を必要とする。
 →授業時間が不足する。
 ペットのように育てた動物を「殺す」という行為は、子どもの心を傷つける可能性がある。
  →このことが授業のテーマ
 衛生上の問題;豚に対するイメージ


そもそも体験自体が・・・

 先ほども触れたようにそもそも現代の子どもたちは体験する、ということさえも自由にできない。

 第二次世界大戦後、子どもたちは様々な体験の機会を喪失している。
 たとえば現在中学校では職業体験と呼ばれる体験授業が行われているが、戦前は子どもは親が働いている風景を身近で見ていた。そんな時代はわざわざ職業体験などする必要はなかった。

 自然体験と言っても、画一化され、用意されたフィールドで大人の指示に従って体験する。


 こうして規格化された状況になれすぎた人間は、イレギュラーに対応できない

 小学校で豚を育てて食べるという体験は、「イレギュラーな出来事」である。
 規格化された教育に慣れた教員、保護者はそうしたイレギュラーに対応できなくなっている。

 しかし、子どもたちはどうか???  おそらく大人よりも子ども方がイレギュラーに対応できる。


 今回は映画を触媒にして様々な形で発想してみた。この知的触媒として扱う方法は、このように自由に発想して議論を深め、あるいは広めていくことを目的とする。その中で新たに知見を得るかもしれない。また自分の人生を見つめ直す機会ができるかもしれない。

 短い休み期間中に自分自身でいろいろな映画について発想を巡らせてほしい。

*今回は語調が変わっています。どうかご容赦を。


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クリスマスシーズンなので・・・。

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