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社会学入門 第1講 序論 [社会学入門]

社会学入門 第1講 序論

 講義の最初に『授業概要(シラバス)』に書かれた内容を確認したいと思います。

<以下、『授業概要』からの抜粋』>

【履修条件】
 やる気と熱意。積極的な参加意欲

【教育目標】
 漫画、ドラマ、小説を題材に社会学する

【内容】
 社会学は人間関係や集団、社会現象、社会の仕組みなどを対象とする学問です。こうした社会学の対象は私たちの日常生活に密接に関係していて、私たちは特にその内容を吟味したり、説明したりすることなく、「当然のこと」あるいは「常識」としてあまり深く考えません。社会学では私たちが「当然のこと」、「常識」あるいは「自明なこと」として深く考えないことを対象にして、その内容の理解を深めようとします。そのことによって私たちの社会生活がよりスムーズになると考えているからです。
 鏡を見なければ自分自身の姿を見ることができないように、社会学が対象にしているものは、自分自身がその中に含まれているので、そのままでは客観的に観察することが困難です。特に社会学という学問を知らない人には難しく思える面が多いと思われます。そこでこの授業では、皆さんが親しみやすい漫画、TVドラマ、小説を題材にして、社会学的な視点について紹介したいと思います。

【授業の進め方】
 ドラマや小説、漫画などをとりあげ、いくつかの場面をもとに社会学の理論や考え方を紹介します。

1講.   導入
2~5講.   行動と行為
6~10講.   地位と役割、演技
11~15講.  権力と権威

 過去の講義ノートをすべて公開しています。確認できる人は履修前に確認しておいてください。もちろん内容は異なりますが、いくつか重複する場合もあります。
 http://www.bunkei.net/iij4u/index.html

【文献】
 教科書はありません。必要な文献については授業中に適宜紹介します。

【成績評価】
 課題リポート(3回実施各30点)+出席点(10点)。1回でもリポートを提出しなければ「失格」になります。また内容が悪ければ、3回すべて提出しても不合格になります。リポート提出はMICCSおよび電子メールを利用します。

【お知らせ】
 リポートの提出先および授業についての質問はbunkei@fukujo.ac.jpまで

<以上、『授業概要』からの抜粋>

 最初に授業の中での注意事項を述べておきます。出席については毎週コメントカードを配布しますので、それをもとに出席を取ります。授業15回のうち3分の2以上出席しないと、自動的にF評価(失格・放棄)がつきますので、自分で出席管理をしっかり行ってください。
 次に授業中の私語の問題です。大学(専門学校や高等学校も基本的に同じ)は、学生から高い授業料を徴収し、授業を販売しています。つまり学生の皆さんは授業という商品を購入しているのです。そして最終的には学士という身分を購入することになります。授業中に「私語」をするということは、他人が購入した商品を壊したり、盗んだりすることと同じです。端的にいえば、授業中に私語をして授業の進行を妨害することは、「犯罪」と同じということになります。私たち教員はお客さんに確実に商品を届ける義務があります。ということは、授業中に犯罪が行われていることを黙ってみているということは許されません。もしも私語という犯罪を見過ごせば、教員は義務不履行になってしまいます。小学校や中学校という義務教育の中では、私語をしている生徒を教室外に出すと、「教育を受ける権利を侵害した」と言われる可能性がありますが、大学では、私語をしている学生を放置している方がまずいのです。従って、大学での授業では私語をしている学生を教室外に出し、授業という商品を購入者に確実に届けられるようにしなければなりません。
 本講義では、私語をしたい学生は最初から授業に出席することを拒否します。私語をしないときだけ授業に出席してください。その上で、3分の2以上の出席をして、商品を受け取ってくださるようにお願いいたします。もしも授業中に私語をしている学生がいたら、私は退出するように指示します。あまりにもひどい状況が続けば、私は授業の販売自体を拒否したいと思います。『授業概要』の履修条件に掲げた「やる気と熱意」にはそうした意味も含めています。
 もしもこの条件(契約)に納得できない場合には、履修を取り消してください。この科目は「選択科目」なので、単位を取得しなくても卒業することは可能です。

 ここで毎年、納得できない学生の退出を促すのですが、例年は多くても15名程度しか退出しません。今年は・・・ざっと数えても20名をこした学生が退出しました。授業中に私語をしたい学生が多いのでしょうか? それともたった3回のリポートがきついのでしょうか・・・。どうも大学という場所がどのような場所か理解していない人が増えているようです。
 大学という場所は、勉強する方法を学ぶ場所であり、自分が生涯生き生きと生きるための手段を取得する場所です。けっして、ディズニーランドではありません。

 それでは、もう少しこの講義についての説明を続けたいと思います。『授業概要』に書かれているように、社会学は人間関係や集団、社会現象、社会の仕組みなどを対象とする学問です。物理学のようにモノを対象とした学問ではありません。だから対象を目で見て確認することが困難です。また、法律を対象とする法学、経済を対象とする経済学のように対象が明確になっているわけでもありません。人間の活動全般を扱うといえるほど幅広い対象をもっています。さらに自分自身が対象に含み込まれていて、簡単に切り離して観察することができません。社会学者とよばれる社会学の専門家は、対象を切り離して研究する訓練ができているので、対象を切り離して研究の対象にすることができますが、初心者には難しく感じられることが多いと思います。そこで本講義では、研究の対象を切り離してデフォルメして表現しているマンガ、アニメ、ドラマ、小説などを対象にします。そうすれば、初心者でも社会学の考え方を容易に理解できるようになると思います。そして皆さんが生活の中で「常識」や「当たり前」と捉えられていることを、客観的に議論していきます。
 最初の授業ですから、社会学が対象としているものを切り離した例をあげて、具体的に本講義で行う作業を説明したいと思います。
 例年、この講義では第1回目の材料として「歌」を取り上げてきましたので、今回も歌を取り上げます。今回取り上げる作品は、大黒摩季の「ら・ら・ら」です。この作品は1995年2月に発売され、テレビ朝日で放映されたドラマ『味いちもんめ』の主題歌になっていました。

「ら・ら・ら」

大黒摩季作詞・作曲 葉山たけし編曲

 懐かしいにおいがした すみれの花時計
 恋愛中ってもっと楽しいと思ってた
 好きになるのは簡単なのに
 輝きを持続するのは…

 らら~ ららら~ ららら~ ららら~
 今日と明日はあなたに逢えない

 テレビやマスコミは いったい誰のもの?
 とっても寂しいから とりあえずつけてます
 夢があるのは いいのだけど
 こんなに忙しい人じゃ…

 らら~ ららら~ ららら~ ららら~
 今日も明日もあなたに逢いたい
 年月(とき)が経(た)つのは ナゼこんなに早いのだろう
 あっという間にもう こんな年齢(とし)だし、
 親も年だし、あなたしかいないし… ねえ

 らら~ ららら~ ららら~ ららら~
 何かやらなきゃ 誰にも会えない

 人の心 裏の裏は ただの表だったりして
 振り返れば恋ばかりで つい自分を忘れてた
 これから私 何をどうして
 生きていけばいいんだろう…

 らら~ ららら~ ららら~ やっぱり
 今日も明日もあなたに逢えない

 らら~ ららら~ ららら~ だけど
 今日も明日もあなたに逢えない

 ずっとずっとずっと 一緒にいようね

 ボブ・ディランのライブビデオを見ていた大黒摩季が、コンサートの最後に大物ミュージシャンたちがディランと一緒に大合唱しているのを聴いて、触発されて作った曲です。時代を一緒に生きたってという感じに感動したそうで、確かにこの曲はカラオケなどでもその場にいる人たちが一緒に大声で歌える曲だと思います。
 さてこの歌はラブストーリーです。そして歌詞は「あるある~」と言いたくなるような内容になっています。たとえば「好きになるのは簡単なのに、輝きを持続するのは」難しいというのは、恋愛中に誰もが感じることでしょう。人によって好きになるのは様々です。一目惚れしてしまう人もいれば、いつのまにか好きになっていたという人もいるでしょう。しかしどのようなパターンでも「好きになる」こと自体は、簡単です。もちろん好きになってはいけない人を好きになってしまうこともあると思います。しかし好きになること自体は、そうした状況による悩みには無関係です。そして好きになっていい人を好きになった場合、最初のうちは「好き」という気持ちでいっぱいになって、輝いています。ただ何年もたつと誰もこの最初の気持ちを維持していることはまれでしょう。「倦怠期」とはよくいったもので、まさに飽きたような状態になってしまいます。そしてそうした倦怠期の状態になって時、好きになる前はもっと楽しいと思っていたのに、というように昔を懐かしむ段階があります。それがこの歌では、なつかしいすみれのにおいがしたと表現されています。おそらく好きになった頃によく待ち合わせていた花時計があったのでしょう。そして続く歌詞で現在の状況が詳しく語れます。
 この人はおそらく一人暮らしをしているのでしょう。学生時代なら時間がありますから毎日のように会うことができます。しかし二人とも就職して働き始めると、毎日毎日会うなんてことは不可能です。会っている時間が楽しい分、一人でいる時間はとても寂しく感じられます。だから一人暮らしの人の部屋のテレビはいつもスイッチが入れられています。ともかく何か音がしていないと寂しいからです。それが自分だけに向けられた言葉でなくても、ともかく「とりあえず」つけていて、大部分の人がテレビに反応して話しかけてしまいます。たとえテレビが自分に話しかけてくれなくても・・・。
 1995年というと、バブル経済がはじけた後です。それでなくても日本人は海外の人から働き過ぎと言われるほど働いていましたが、バブル経済がはじけた後は、労働時間が極端に延びました。特に何か夢を実現しようとする人は、普通の労働時間ではありません。会いたくても会えない、でも夢を追いかけている姿を見ると、面と向かって会いたいとはいえません。それでもこんな状況でいると自分はどうなってしまうのか・・・。
 時間の経過はいつも一定です。しかし時間の経過の感じ方は年齢によって相対的に変化するようです。20歳代まではゆっくりと経過していた時間が加速して経過していきます。そして気がついたときには、とっくに婚期を逃していたということになってしまいます。悩んでいるうちに自分があてにしていた親は自分を当てにする年齢になっていたということになります。そして結局、長くつきあっている彼しか残っていないのです。そして「これから私 何をどうして生きていけばいいんだろう」という言葉が頭の中でリフレインするのです。
 実は歌詞の内容だけをみると、この歌は非常に暗く感じられます。しかし曲自体はポジティブです。つまりポジティブに生きようという大黒摩季のメッセージが込められているのです。
 どうでしょう。歌は私たちの日常生活をうまく切り取っていると思いませんか。この歌では、恋に夢中になりたい自分、恋に夢中になっていた自分を反省する自分、これからの恋を考える自分、そうした様々な自分の内面が表現されています。そして私たちが日常生活の中で感じている事柄がはっきりと歌われているように思います。

 すべての歌が生活の一部を切り取っているわけではありません。しかし多くの楽曲が私たちの生活の一場面をもとにしていると思います。そうでなければ、「共感」という感情は生まれません。
 次回からはドラマやアニメなどを題材にして、社会学の理論や方法論を紹介していきます。どのような作品が取り上げられるかは、今回は述べません。楽しみにしていて下さい。

 ちなみに次回は「俺の胃袋は宇宙だ」の草薙君が主演したドラマです。


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bunkei

自己レスです。
授業終了後、「ハナダン」と「GTO」の希望者がおられました。
う~む。どちらも原作は漫画です。しかもけっこう個人的に好きな作品です。

悩むな~~~~
by bunkei (2007-04-13 19:53) 

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