映画の社会学2011第3講 メディア論的方法(2) [映画の社会学]
映画の社会学 第3講 メディア論的方法(2)
他の媒体と映画の比較
【小説の表現方法】
小説は原則として文字(言葉)で表現します。現象を文字(言葉)で表現するだけでなく、登場人物の「心の声」も言葉で表現されます。小説の特徴としては文字以外に描写の手段がないからです。読者は書かれた言葉を読んで、どういう風景なのか、何が生じているのかを想像するしかありません。
小説は「言葉の表現がすべて」です。
たとえばあさのあつこの『バッテリー』という小説では次のように表現されます。
「(やっと本気になったな)
豪は、山なりのボールを巧みにかえした。
返球を受ける。そして、
やっと本気になったな。
巧は、胸の内でつぶやいた。
まったく大人ってのは、せわがやける。ため息が出そうだった。稲村たちは、ずっと豪とのキャッチボールを見ていたのだ。本気にならなければ打てない球だとわからなかったのだろうか。鈍い。腹が立つほど鈍い。
もし、巧が大人だったら、稲村は一球目から本気でバットを握っただろう。あるいは、とても打てないと断ったかもしれない。どちらにしても、遊び半分で、打とうとは思わなかったはずだ。
あらためて稲村の顔を見た。さっきまでの笑いが、消えていた。構えも違う。小太りの身体が、少しひきしまった。力が漲る。
そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。子どもだとか小学生だとか中学生だとか、関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見てろよ。」
【漫画の表現方法】
漫画では大きく文字(セリフ)での表現と絵での表現の2種類がある。
<文字で表現>
基本的に漫画での文字表現は吹き出しに書かれたセリフで行われます。この吹き出しに書かれたセリフは声に出された言葉です。海外の漫画のほとんどがセリフは吹き出しに挿入されています。日本漫画では、吹き出しのないセリフが使われる場合があります。特に少女漫画では吹き出しのないセリフによって登場人物の心の声が表現されます。ナレーションも吹き出しのないセリフによって表現されることがあります。
<絵で表現>
登場人物の感情をキャラの表現、記号、背景などで表現されます。
こうして漫画では文字と絵の2種類を組み合わせて、情景描写、心情表現が行われます。
【ラジオの表現方法】
ラジオは視覚にうったえるメディアではありません。ラジオは聴覚媒体です。従って、次のような表現方法が用いられます。
・声の調子(音の高さ、強さ、ふるえ、息のまぜ具合、鼻音のバランスなど)
・効果音(雨音、風音、騒音など)
・音楽
→音楽はセリフ以上に人間の心の声を明確に表現します。
【アニメーションにおける声優の表現】
ラジオドラマは「聴く」要素だけで「観る」要素がありません。それに対してアニメーションは「聴く」要素も「観る」要素もあります。だから声優は同じように声だけを出していますが、表現に違いが見られます。
ラジオドラマでは声だけですべての表現をしなければなりません。しかしアニメーションは声だけでなく、むしろ視覚表現の補助的役割になることがあります。そしてアニメーションの場合、絵と矛盾しない表現が必要です。
【映画での表現】
<ナレーション>
ナレーションは画面の画像によってではなく、画面の外で行われる音声です。これはセリフにはならない音声で、登場人物の心情が表現されたり、画面に映された状況を登場人物が紹介する場合に用いられます。
<文字>
音声ではなく文字で登場人物の心情が表現される場合があります。メール、チャットなどが一般的になってからはPCや携帯電話の画面に文字を写しだして表現するようになっています。メールやチャットで文字を利用するのは物語の進行の上で必然性があります。しかしそうした必然性はなく、画面に字幕(テロップ)を使って登場人物の心情や状況を表現する場合もあります。
→言葉を視覚的に表現するということです。
<独白>
ナレーションのように声にならないセリフではなく、きちんと声に出しているのに、誰かに語りかけてはいないセリフを独白と言います。独白もナレーションと同じようにそのときの登場人物の心情や状況を説明する内容になります。
たいてい独白は誰もいない場所で行われるか、まわりに誰かがいたとしても独白の内容が無視されます。
<アイテム>
本人以外の人物やアイテムによって登場人物の心情が表現される場合があります。たとえば他の登場人物に心情を語らせたり、代役をさせたりします。手紙やテープというのは登場人物の心情を直接表現するのに有効なアイテムです。心情を人格化して表現する場合もあります。
<画面の色>
想い出、過去の出来事などを表現する場合には、カラーではなく白黒やセピア色で表現します。
<演技>
普通は登場人物の表情や行動、しぐさなどの演技によって登場人物の心情が表現されます。これは日常生活で行われていることと同じです。私たちも行動やしぐさ、態度あるいは声の調子によって相手の心情を読み取ります。
<画面上の表現>
フレーム(構図)での表現
→客観的視点ー主観的視点
→人物の配置、ものの配置
→役者の立ち位置
→アングル
カメラの撮影方法
カメラの移動ーカメラの固定
→カメラの動きによって登場人物の心情が表現されます。
他の媒体と映画の比較
【小説の表現方法】
小説は原則として文字(言葉)で表現します。現象を文字(言葉)で表現するだけでなく、登場人物の「心の声」も言葉で表現されます。小説の特徴としては文字以外に描写の手段がないからです。読者は書かれた言葉を読んで、どういう風景なのか、何が生じているのかを想像するしかありません。
小説は「言葉の表現がすべて」です。
たとえばあさのあつこの『バッテリー』という小説では次のように表現されます。
「(やっと本気になったな)
豪は、山なりのボールを巧みにかえした。
返球を受ける。そして、
やっと本気になったな。
巧は、胸の内でつぶやいた。
まったく大人ってのは、せわがやける。ため息が出そうだった。稲村たちは、ずっと豪とのキャッチボールを見ていたのだ。本気にならなければ打てない球だとわからなかったのだろうか。鈍い。腹が立つほど鈍い。
もし、巧が大人だったら、稲村は一球目から本気でバットを握っただろう。あるいは、とても打てないと断ったかもしれない。どちらにしても、遊び半分で、打とうとは思わなかったはずだ。
あらためて稲村の顔を見た。さっきまでの笑いが、消えていた。構えも違う。小太りの身体が、少しひきしまった。力が漲る。
そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。子どもだとか小学生だとか中学生だとか、関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見てろよ。」
【漫画の表現方法】
漫画では大きく文字(セリフ)での表現と絵での表現の2種類がある。
<文字で表現>
基本的に漫画での文字表現は吹き出しに書かれたセリフで行われます。この吹き出しに書かれたセリフは声に出された言葉です。海外の漫画のほとんどがセリフは吹き出しに挿入されています。日本漫画では、吹き出しのないセリフが使われる場合があります。特に少女漫画では吹き出しのないセリフによって登場人物の心の声が表現されます。ナレーションも吹き出しのないセリフによって表現されることがあります。
<絵で表現>
登場人物の感情をキャラの表現、記号、背景などで表現されます。
こうして漫画では文字と絵の2種類を組み合わせて、情景描写、心情表現が行われます。
【ラジオの表現方法】
ラジオは視覚にうったえるメディアではありません。ラジオは聴覚媒体です。従って、次のような表現方法が用いられます。
・声の調子(音の高さ、強さ、ふるえ、息のまぜ具合、鼻音のバランスなど)
・効果音(雨音、風音、騒音など)
・音楽
→音楽はセリフ以上に人間の心の声を明確に表現します。
【アニメーションにおける声優の表現】
ラジオドラマは「聴く」要素だけで「観る」要素がありません。それに対してアニメーションは「聴く」要素も「観る」要素もあります。だから声優は同じように声だけを出していますが、表現に違いが見られます。
ラジオドラマでは声だけですべての表現をしなければなりません。しかしアニメーションは声だけでなく、むしろ視覚表現の補助的役割になることがあります。そしてアニメーションの場合、絵と矛盾しない表現が必要です。
【映画での表現】
<ナレーション>
ナレーションは画面の画像によってではなく、画面の外で行われる音声です。これはセリフにはならない音声で、登場人物の心情が表現されたり、画面に映された状況を登場人物が紹介する場合に用いられます。
<文字>
音声ではなく文字で登場人物の心情が表現される場合があります。メール、チャットなどが一般的になってからはPCや携帯電話の画面に文字を写しだして表現するようになっています。メールやチャットで文字を利用するのは物語の進行の上で必然性があります。しかしそうした必然性はなく、画面に字幕(テロップ)を使って登場人物の心情や状況を表現する場合もあります。
→言葉を視覚的に表現するということです。
<独白>
ナレーションのように声にならないセリフではなく、きちんと声に出しているのに、誰かに語りかけてはいないセリフを独白と言います。独白もナレーションと同じようにそのときの登場人物の心情や状況を説明する内容になります。
たいてい独白は誰もいない場所で行われるか、まわりに誰かがいたとしても独白の内容が無視されます。
<アイテム>
本人以外の人物やアイテムによって登場人物の心情が表現される場合があります。たとえば他の登場人物に心情を語らせたり、代役をさせたりします。手紙やテープというのは登場人物の心情を直接表現するのに有効なアイテムです。心情を人格化して表現する場合もあります。
<画面の色>
想い出、過去の出来事などを表現する場合には、カラーではなく白黒やセピア色で表現します。
<演技>
普通は登場人物の表情や行動、しぐさなどの演技によって登場人物の心情が表現されます。これは日常生活で行われていることと同じです。私たちも行動やしぐさ、態度あるいは声の調子によって相手の心情を読み取ります。
<画面上の表現>
フレーム(構図)での表現
→客観的視点ー主観的視点
→人物の配置、ものの配置
→役者の立ち位置
→アングル
カメラの撮影方法
カメラの移動ーカメラの固定
→カメラの動きによって登場人物の心情が表現されます。
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2011-10-06 21:51
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