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社会学入門 第13,14講 様々な社会学理論(4,5) 応用編 [社会学入門]

社会学入門 第13講 様々な社会学理論(4)応用

 今回は前回時間の関係で十分お話しできなかった「白い巨塔」についての話からはじめます。

 第1話の最後の方の「告知」の場面で、話をしている途中で財前は立ち上がっています。なぜ立ち上がったのでしょう。そもそも相手よりも高い場所に位置するというのは何を意味しているのでしょうか? 
 時代劇を観ているとよくわかるのですが、身分の高い人は身分の低い人よりも高い場所に座っています。これは「権威」を象徴しています。高い場所に位置する人は「権威」があると認められた人、ということを表し、一般の人と一線を引きます。財前が途中で立ち上がったのは、自分が権威者であることを患者に認めさせ、権力を行使するためです。相手との位置関係を明確にすることによって、「支配-服従関係」を確立します。
 この関係は続くセリフによっても表現されています。「大丈夫です。私が手術しますから」、「え、財前先生が手術してくださるんですか???」。患者の夫のセリフは、大阪府知事の手術をするような偉い先生が、一般人の自分たちのようなものの手術をしてくださるのか、という驚き、ともとれますが、それ以上に自分たちが財前に服従することを表現しているような気がします。

 実はこのシーンは冒頭の手術室でのシーン、財前が手術室から東教授を見上げるシーンと呼応しています。

 手術室でのシーンは、財前が下に位置する手術室から東教授を見上げているのですが、よく見ると「見上げている」のにもかかわらず、「上からの目線」になるアングルで撮影されています。このシーンによって、財前が権威者になることを表明することになります。つまり東という権威者との交代をほのめかしているのです。財前が権威者になるということを暗示するシーンを第1話の冒頭と最後に挿入することによって、財前の意図が視聴者に明確に伝わります。

 さて伝統的支配における権威者の交代は何が重要でしょうか。権威は原則として社会的承認が前提となります。したがって人々が信じている「伝統」に忠実である、ということを示すことが権威者になる重要なポイントです。
 大学病院の教授という社会的地位には「権威」が合法的に認められており、原則的に「選挙」によって決定されます。選挙という合法的なルールによって決められるのですが、実際には現教授の推薦がそのまま認められます。そのような伝統になっています。そのため、財前は伝統に従って東教授に逆らうことができません。
 それでは合法的支配における権威者の交代は何が重要でしょう。ここでも権威は原則として社会的承認が前提となります。ただしここでは伝統ではなく、人びとが承認しているルールが重要です。たとえば国会議員を選ぶ選挙では、投票される数が多ければ国会議員になることができます。投票数獲得がルールに合致すると言うこと、合法的ということです。どのような手段でも、ともかく投票数が多ければ議員になることができます。こうして選挙で選出されれば、人びとに承認された権威者になれます。

 それでは次に「教授総回診」について考えてみたいと思います。大学病院では「教授総回診」という検診があります。これは教授が自分の所属する科の入院患者全員を検診するという、一種のイベントで、俗に「大名行列」と呼ばれています。このイベントは制度に定められたことです。いわば合法的に教授が権威者であって、患者全員を支配しているということを示します。
 ドラマで描かれていたように、総回診の時に、患者がベッドまわりを整えて、その上で正座して待つのは、伝統です。いわば伝統的支配になっています。
 大学病院は「合法的支配」と「伝統的支配」が作り上げた「巨塔」になっています。このような仕組みになっていると、支配-服従関係が強固になります。財前は伝統によってもルールによっても、社会的に承認された教授になるために画策していきます。


 さて今回は今まで説明してきた様々な社会学理論を使って、歌とショートドラマを分析してみたいと思います。

対象となる歌:

「愛のうた」(2007年9月12日発売)
歌:Kumi Koda
作詞:Kumi Koda , Kosuke Morimoto
作曲:Kosuke Morimoto

「M」(1988年11月21日発売)
歌:Princess Princess
作詞:富田京子
作曲:奥居香

※著作権の許可を得ていないので、ここには歌詞は表示しません。

以下、ここでは授業中に提示したスライドの文字だけを引用します。授業に参加されなかった人は、表示された文字を参考にして、自分で分析してみてください。

<「愛のうた」の状況>

   あいまいな関係でもいい
   いつもと変わらず優しくしていて
   本当ことは言わないで
   会えなくなるなんて もう 受けとめられない

   さよならは言わないで

      ↓

相手にふられる(自分に対して愛がない)ことがわかっている人の気持ち


<「愛のうた」主人公の特徴>

現在の幸福が重要 → いま、ここ
自分の気持ち優先 → 自己中心的

    ↓

幼児のような心情

<「愛のうた」主人公の行動>

   夢の仲でもいいから 逢いたいと願う
   今夜も夢の中へ落ちていく

    ↓
   夢への逃避

<「M」の状況>

   黒いジャケット後ろ姿が
   誰かと見えなくなっていく

   いつも一緒にいたかった
   となりで笑ってたかった
   季節はまた変わるのに
   心だけ立ち止まったまま

    ↓

相手にふられた後の人の気持ち

<「M」主人公の特徴>

過去の幸福に縛られている
相手に気持ちを伝えられない
“You are only in my fantasy"

    ↓

自分の気持ちを見つめる

<「M」主人公の行動>

   星が森へ帰るように
   はしゃいだあの時の私も   → 自然に消えて(いく)
   小さなしぐさも
   あなたしか見えない私も

    ↓

positiveに未来を生きていく


<社会学的仮説>

 ここでうたに関する社会学的な仮説をたててみましょう。

「歌がヒットする」=人に聴かれる

        ↓

その時代の人々の共感を得る

         ↓

       人びとは歌と同じように感じている

この仮説に基づいて歌を分析してみると・・・、


「愛のうた」の主人公はpositiveになれない、将来を期待できない、のはなぜか?

         ↓

2007年の「時代の閉塞感」、「見えない将来」、「期待できない経済」など


「M」の主人公が最後に過去を捨て、positiveになれた、のはなぜか?

         ↓

1988年の「時代の開放感」、「輝かしい将来」、「バブルな経済」など

 このようにその時代にヒットした歌を分析すると、その時代に生きた人びとがその時代をどのように捉えていたのかを推測することができます。もちろん、この推測が適切かどうかは、別の資料と照合する必要があります。

 皆さんも様々な歌を自分なりに分析してみてください。ドラマについても同じように分析することができます。授業の中ではテーマに合わせた分析をしてきましたが、テーマに縛られず、登場人物の行為の意味を分析してみてください。今まで感じなかった製作者のメッセージが得られるでしょう。


 社会学の理論の大部分は日常生活に応用することができます。しかしそのためには普段から社会学的な物の見方や考え方を使って訓練しなければなりません。社会学的な理論を利用できれば、社会生活がスムーズになります。



社会学入門 第14講 様々な社会学理論(5)



 第3回目のレポートを発表します。

課題作品は、

『HERO(ヒーロー) 第1話』
  演出:鈴木雅之、平野眞、澤田鎌作、加門幾生
  脚本:大竹研、福田靖、秦建日子、田辺満

です。


 課題は、

課題
  『なぜ雨宮は、久利生が写真の謎を解いたことを皆に知らせなかったのか』
  
 雨宮は久利生が写真の謎を解いたことを皆に知らせませんでした。それはなぜでしょう。根拠となる場面やセリフを明示して、理由を論述してください。


 レポートを書くにあたっての注意事項です。

1.この課題は感想文でも作文でもありません。小論文として書きましょう。

2.電子メールで提出してください。手書きのレポートの提出は認めません。
 電子メールで提出された場合には、必ず「受領確認メール」を返信しています。必ず返信メールを確認してください。

3.yahooメールから提出される場合には、返信メールが「迷惑メールフォルダ」で受信される可能性があります。注意してください。

4.携帯メールでの提出も許可しています。この場合、着信拒否のドメイン指定を解除してください。

5.MICCSでの提出も可能です。


レポートの提出期限は2008年7月31日(木曜日)までとします。これは提出期限なので、期限「まで」に提出してください。期限を過ぎたレポートは受理しません。レポートが未提出の場合には、成績は「不可」(D)になります。

 がんばってレポートを作成しましょう。

 質問は随時受け付けています。メールで質問してください。


HERO DVD-BOX リニューアルパッケージ版

HERO DVD-BOX リニューアルパッケージ版

  • 出版社/メーカー: Viictor Entertainment,Inc.(V)(D)
  • メディア: DVD



HERO 第1巻

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  • 出版社/メーカー: フジテレビ
  • メディア: DVD



愛のうた

愛のうた

  • アーティスト: 倖田來未,Kumi Koda,Kosuke Morimoto,Miki Watanabe,Tomoji Sogawa
  • 出版社/メーカー: rhythm zone
  • 発売日: 2007/09/12
  • メディア: CD



SINGLES 1987-1992

SINGLES 1987-1992

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 1992/07/15
  • メディア: CD



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